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西田 穣 ※三重・鳥羽総会特集
二〇一七年三重・鳥羽総会が開催されました。
船尾 徹 自由法曹団団長就任にあたって
脇山 拓 三重・鳥羽総会プレ企画に参加して
青龍 美和子 第一分散会の感想
井上 正信 二〇一七年総会分散会憲法問題発言要旨
鈴木 雅貴 生業訴訟を通じて感じたこと
玉木 昌美 ナチスとよく似た安倍の北朝鮮問題対応
瀧澤 順子 滋賀支部八月集会に参加して



※三重・鳥羽総会特集

二〇一七年三重・鳥羽総会が開催されました。

事務局長  西 田   穣

 二〇一六年一〇月二二日、二三日の両日、三重県・鳥羽市の鳥羽シーサイドホテルにおいて、自由法曹団二〇一七年総会が開かれました。本総会では、二四六名の団員が全国から集まり、活発な議論が行われました。
 全体会の冒頭、伊藤誠基団員(三重支部)、泉澤章団員(東京支部)両団員が議長団に選出され、議事が進められました。
 荒井新二団長の開会挨拶、地元三重支部の石坂俊雄支部長からの歓迎挨拶に続き、三重弁護士会・飯田聡会長、日本国民救援会・鈴木猛事務局長の各氏から、ご来賓の挨拶をいただきました。また、本総会には、全国から合計四九本のメッセージが寄せられました。代表して、全国労働組合総連合のメッセージを代読しました。
 ご来賓の挨拶に続き、恒例の古希団員表彰が行われました。今年の古希団員は三九名で、うち一二名の古希団員が総会に参加されました。参加された古希団員には、荒井新二団長から表彰状と副賞が手渡されました。また、古希団員を代表して、椛島敏雅団員(福岡支部)、谷智恵子団員(大阪支部)、岩下智和団員(長野県支部)、島田修一団員(東京支部)からご挨拶をいただきました。
 続いて加藤健次幹事長から、本総会にあたっての議案の提案と問題提起がなされました。
 総会直前期に目まぐるしく移り変わった情勢に言及しつつ、議案書に基づき、現在全国民が直面している(1)憲法九条改悪阻止のたたかい、(2)基地問題を含む沖縄を取り巻く諸問題を中心に、共謀罪廃止を求めるたたかい、労働法制改悪をめぐるたたかい、脱原発・被災者救済を求める原発のたたかいなどについて問題提起しました。さらに予算・決算の報告がなされました。
 次に、三澤麻衣子団員(東京支部)から会計監査について報告がなされました。続いて、選挙管理委員会の中川勝之団員(東京支部)から団長に船尾徹団員(東京支部)が無投票で選出された旨の報告がなされました。
 今回の総会は、一日目を全体会前半と後半に分け、一日目の全体会前半終了後、さらに全体会(後半)を継続し、改憲阻止問題や北朝鮮問題などの情勢問題を除く重要課題についての発言・討論がありました。また、二日目は前半に三つの分散会に分かれて改憲阻止問題及び北朝鮮問題などの情勢問題を集中討議し、後半に行われた全体会にて、各分散会の議論を踏まえて各団員から発言がなされました。発言者と発言内容は以下のとおりです。
(一日目)
〇新垣  勉団員(沖縄支部)辺野古新基地建設反対運動の現状
〇大住 広太団員(東京支部)東京支部沖縄調査団報告
〇小部 正治団員(東京支部)沖縄問題‐東京支部沖縄調査団について
〇三澤麻衣子団員(東京支部)共謀罪問題基調報告
〇辻田  航団員(東京支部)共謀罪問題について
〇山本  妙団員(岐阜支部)共謀罪の前倒しとしての大垣警察市 民監視事件の取り組み
〇弓仲 忠昭団員(東京支部)共謀罪廃止を求める運動と弁護士会 の役割、その中での団員の活動の連帯について
〇今村幸次郎団員(東京支部)労働問題の討論にあたっての問題提起
〇青龍美和子団員(東京支部)労働契約法二〇条裁判の到達点と展望
〇中村 和雄団員(京都支部)パート法旧八条(現行九条)が適用 された事件報告
〇井上 耕史団員(大阪支部)安倍「働き方改革」に対する大阪で の取り組み
〇冨田 真平団員(大阪支部)派遣労働者のためのネット相談事業 をはじめとする大阪を中心とする派遣問題の取り組みについて
〇馬場 啓丞団員(三重支部)シャープ工場における外国人有期雇 用労働者の整理解雇事件について
〇藤岡 拓郎団員(千葉支部)福島原発事故避難者集団訴訟千葉判 決について
〇菊池  紘団員(東京支部)福島原発・生業訴訟福島地裁判決に ついて
〇渡邊  純団員(福島支部)生業集団訴訟の前進に確信を持ち、 全国でさらにたたかいを広げよう
〇吉川 健司団員(福井県支部)原発差止訴訟の現状と今後求めら れる取り組みについて
〇柿沼 真利団員(東京支部)「原発と人権」ネットワークの取り組み
〇西原 和俊団員(東京支部)家庭教育支援法の提出に反対する決 議について
〇宮本 亜紀団員(大阪支部)司法修習生の給費制問題について
〇大久保賢一団員(埼玉支部)核兵器禁止条約の採択と今後の取り 組み
(二日目)
〇田中  隆団員(東京支部)総選挙の結果と改憲阻止の課題
〇西   晃団員(大阪支部)総選挙の結果と大阪での取り組み、 今後の展望について
〇尾崎 彰俊団員(京都支部)改憲阻止のための京都での取り組み
〇長尾 詩子団員(東京支部)選挙結果をふまえて、憲法改悪反対 への運動の取り組み
 討論の最後に加藤幹事長がまとめの発言を行い、議案、予算・決算が採決、すべて承認されました。
 続いて、以下の四本の決議が採択されました。
〇安倍政権が進める「戦争をする国」づくりに断固反対し、憲法九 条改憲を全力で阻止する決議
〇福島第一原発事故による被害の全面救済及び原発推進政策から即 時撤退し原発ゼロ社会の早期実現を求める決議
〇安倍政権の「働き方改革」一括法案に反対し、働くルールの確立 を求める決議
〇家庭教育支援法の提出に反対する決議
 選挙管理委員会の村田雄介団員(三重支部)から、幹事は信任投票で選出された旨の報告がなされました。引き続き、総会を一時中断して拡大幹事会を開催し、規約に基づき、常任幹事、幹事長、事務局次長の選任を行いました。
 退任した役員は次のとおりであり、退任の挨拶がありました。
  団長    荒井 新二(東京支部)
  事務局次長 湯山  薫(神奈川支部)
  同     久保田明人(東京支部)
  同     種田 和敏(東京支部)
  同     岩佐 賢次(大阪支部)
 また、事務局長を留任した西田からも挨拶をしました。
 新役員は次のとおりであり、代表して新たに選出された船尾徹団長から挨拶がなされました。
  団長    船尾  徹(東京支部 新任)
  幹事長   加藤 健次(東京支部 再任)
  事務局長  西田  穣(東京支部 留任)
  事務局次長 酒井 健雄(東京支部 留任)
  同     緒方  蘭(東京支部 新任)
  同     深井 剛志(東京支部 新任)
  同     尾普@彰俊(京都支部 新任)
  同     遠地 靖志(大阪支部 新任)
 閉会にあたって、二〇一八年五月集会(五月二〇日〜二一日、一九日にプレ企画を予定)開催地である鳥取支部・高橋敬幸支部長からの歓迎のメッセージが寄せられましたので、代読されました。 最後に三重支部の村田正人団員による閉会挨拶をもって総会を閉じました。
一〇 総会前日の一〇月二一日にプレ企画が行われました。今回のプレ企画は前半の三重支部企画として「芦浜原発はなぜ二度も白紙撤回されたか?」と題して地元議員の手塚征男さんがパワーポイントを使用してたたかいの歴史を語っていただき、その後、たたかいの中心にいた手塚征男さんと小倉紀子さんにパネリストとなっていただき、小貫陽介団員(三重支部)の司会のもと、話をしてもらいました。
 後半は、本部企画として、北村栄団員(愛知支部)から「脱原発訴訟の問題点と今後の課題」と題して話をいただき、その後、南雲芳夫団員(埼玉支部)から「被害者訴訟の到達・成果を脱原発訴訟に生かす」と題して話をいただきました。
 プレ企画には全体で五〇名の団員が参加しました。
一一 今回も、多くの団員・事務局の皆さんのご参加とご協力によって無事総会を終えることができました。総会で出された活発な議論を力に、憲法九条改悪反対運動を中心とした大きなたたかいに取り組みましょう。
 最後になりますが、総会成功のためにご尽力いただいた三重支部の団員、事務局の皆さま、関係者の方々に、この場を借りて改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。


自由法曹団団長就任にあたって

東京支部 船 尾   徹

 この激動の三年間、元気に走り続けてこられた荒井団長、ご苦労様でした。荒井団長からただいまバトンを引き継ぎました東京支部の船尾です。
さて、今般の選挙結果をみて、みなさんにはさまざまな思いがよぎっていることだろうと思います。立憲民主党が野党第一党として進出したものの、共産党は一歩後退。そして、改憲の自公勢力が三分の二を越え、改憲攻勢がいよいよ本格的に強まってくることは間違いありません。
 しかし、みなさん、改憲勢力による憲法破壊の野望に怯むわけにはいきません。「九条改憲」に反対する市民は全国各地に広範に存在しているのです。この広範に存在する市民のエネルギーが九条改憲阻止にむけて結集できる場を設定し、これを拡げることに心を砕くことが重要となっています。
 さきの大戦から七二年間戦争をせずに「戦後」であり続けてきたこの国を、特定秘密保護法、戦争法、共謀罪、そして「九条改憲」によって「戦争できる国」へとおおきく舵を切り、やがて「戦争する国」を経験することによって、「戦前」と呼ばれる社会が今日のこの時代を起点にして始まったと、後世の歴史家から総括されるようになるのか否か、そうした重大な歴史的な岐路に、私たちは、いま、立っているのだと思います。
 しかし、今日のこの時代を「戦前」と呼ばれる社会に転換させてはならない。いまだポイント・オブ・ノーリターンの一線を越えてはいないのです。そのために私たちは改憲をめぐって激しく拮抗しているこの時代の現場に立って、原発被災者のたたかい、原発ゼロ社会をめざすたたかい、辺野古基地建設反対のたたかい、労働法制改悪阻止のたたかいなど全国各地で日々取り組んでいるたたかいの諸課題と結合しながら、この時代と切り結ぶことが、いま、求められているのではないでしょうか。
 戦争法が強行裁決されてから今日まで市民と野党の共闘は、二年におよぶ経験を重ねてきました。安倍政権が進めようとしている「九条改憲」を許さない、改憲阻止をめざす市民と野党の共同を拡げに拡げ、この共同のたたかいを通して改憲政権に代わる市民と野党の共同政権をどのようにつくりあげていくのかが、私たちの当面する基本的な課題となっています。
 改憲阻止のための地域における共同を強めることの重要性が本総会で提起されています。私の所属する事務所がある東京の大田地域においては、改憲阻止のための共同の組織である「オール大田」が創り上げられてきました。しかし、今般の選挙では統一できませんでした。ただ、「オール大田」による提起で、選挙が公示される前日に各野党の候補者に集まってもらい、安倍九条改憲ノーの三〇〇〇万署名をそれぞれの立場から訴えていただくきました。私は、本総会での討論をうけて、こうした状況のもとでこれをどのように拡げていくのか、おおくの市民とともに叡智を集めて、明日への展望を切り拓いていこうという思いでおります。
 みなさん、私たちの先輩は、治安維持法による弾圧が猛威をふるった暗い谷間の時代、そして、戦後の平和と民主主義の高揚、続いて暗転していく困難な時代を、おおくの労働者、市民とともに、自由と人権、平和と民主主義のために、「あとに続く者を信じて」走り続けてきたと思うのです。私たちも、今日の改憲策動に抗して、先輩たちが追求してきたこの「戦後的価値」を未来の世代に送り届けるために、「あとに続く者を信じて」走り続けていこうではありませんか。歴史を創りあげていくのは私たちです。
 まことに非力な団長ではありますがよろしくお願い致します。


三重・鳥羽総会プレ企画に参加して

山形支部  脇 山   拓

 昨年の佐賀・唐津総会は、父に故郷浜崎の現在の情景を何としても写真で見せたくて、プレ企画は出ず、総会二日目も早めに失礼してあちこちまわっていました。何とかぎりぎり、まだそれなりにしっかりしている状態のうちに写真を見てもらえました(父はこの八月に逝去。)。
 その罪滅ぼしという訳でもありませんが、今年はこのGWから運行を開始した夜行バスで大阪まで行き、近鉄伊勢志摩ライナーで鳥羽へ入り、プレ企画から真面目に参加しました。
 第一部は三重支部企画の「芦浜原発はなぜ二度も白紙撤回されたか?」。三重に原発がないことは、二〇一四年の和歌山五月集会で購入した「原発を拒み続けた和歌山の記録」に「三重県を含めて紀伊半島には原発が全くない。」と書かれていたので知識としては持っていましたが、具体的なお話を聞くのは今回が初めて。落下傘候補として、原発阻止のために町へ来て、町議選に立候補し当選、その後も現在まで町議を続けているという手塚さん。その経歴だけでも驚愕ですが、たんたんとした語り口ですさまじい反対派と推進派のせめぎ合いをお話されました。反対派幹部が襲撃されたり、中部電力の工作員を実名で晒したり、漁協が転びそうなら議会が条例で対抗するとか、中身を知るとその激しさ、厳しさに驚かされることばかりでした。中部電力の人権裁判闘争とも連携した運動をされている点も、不勉強で初めて知り、感銘を受けました。運動の力がどれだけ大きいかがよくわかりました。そして運動の中心におられた小倉さん。単純にお話が面白過ぎ。でもこういう人が中心にいるからこそ、六〇万人もの署名を集める運動になるんだろうと納得しました。
 第二部は本部企画「原発訴訟の現在―脱原発訴訟と被害者救済訴訟の現状とこれからの課題―」。団の企画でなければなかなか聞くことのできない、脱原発訴訟と被害者救済訴訟が互いに連動していくことの重要性が指摘され、勉強になりました。また、北村団員からは、脱原発訴訟の一つの課題は、弁護団の高齢化であるという悲痛な訴えがありました。
 衆議院選挙の投票日前日ということと、天候への不安から参加者が少なく、それ自体はやむを得ないとは思いましたが、もっと多くの団員に参加して欲しかった企画で、その点だけが残念に感じました。
 余談を少しだけ。半日旅行に参加してから、行きと逆ルートで帰る予定にしていたのですが、昨日から近鉄大阪線が動かない。午後からは運転再開の予定だというので、予定通り半日旅行へ参加していると、予定より遅れたものの運転再開の連絡。ほっとして、おはらい町・おかげ横丁でゆっくり食べたり飲んだりしていたら、再び運転中止の連絡(しかも今度は再開の見通しなし)。旅行に一緒に参加していた三重や岐阜の団員の助言も得、近鉄で名古屋へ出てから新幹線で京都へ戻ると、大阪からやって来るバスに乗ることができる(大阪まで行くと間に合わない。)という荒技で最終的には予定通りの時間で帰宅しました。
 おまけとしては、おかげ横丁にいる時に、娘から「修習地が津になった。」という連絡がきました。早速三重支部の団員に厳しくご指導いただくようお願いしておきました。
 なんだかすごい盛りだくさんで充実した総会でした。


第一分散会の感想

東京支部  青 龍 美 和 子

 まず、前日の衆議院議員選挙の結果について感想・意見交換がされた。
 選挙直前の野党共闘の分断、その結果、自民・公明の与党三分の二以上の議席獲得への残念感、明文改憲への危機感が共通して語られた。しかし、「この二年間を振り返るとすごいこと。歴史は一直線に進まない。」、「野党共闘を求めてきた市民は諦めていない。各地でそういう人たちを支えて励ましていくことが必要。」、「公示前に署名を送ったところ、反応が良かった。改憲阻止の運動が選挙運動に反映している。」、「希望の党に行った議員も、共闘できる可能性がある。」など、発言したほとんどの団員が前向きな捉え方をしていたように思う。さすが自由法曹団員。政治を変える手段は選挙だけではない。民進党が分裂する中で、市民からの声に押されて立憲民主党ができ、野党第一党になったことに希望を持ちたい。私も、野党共闘を中心になって進めてきた日本共産党の議席が減ったことで、国会での影響力が弱まるのではないかと心配ではある。しかし、市民の運動を支え、より大きくすることで、アベ改憲を阻止するために立憲民主党に大いにはたらいてもらうことを期待する。
 今後確実に出されるであろう憲法九条の「改正」については、北朝鮮問題とリンクさせて活発な議論がされた。マスコミが北朝鮮の脅威を煽るなかで、戦争になれば核兵器が使われ取り返しのつかない被害が出ること、脅威をつくりだしているのはアメリカ・トランプ政権であること、脅威を削減するためには外交・対話という方法しかないこと、そのための枠組みはすでにできていること、自衛隊の増強をすることが北朝鮮問題を解決することにはつながらないこと、むしろ非軍事的な平和の構築を目指す憲法九条を生かすべきこと等々、もっともな話が次々と出された。
 問題は、憲法改正案を発議させないために、こういった議論の内容をどうやって市民に伝えるかである。憲法カフェや学習会をもっと広げること、支持政党の違いを超えて面白い企画を実施していること、学習会の講師として一方的に話すだけではなく参加者と対話しながら討論することの重要性、「憲法改正と検索してヒットするウェブページをつくって拡散すること、わかりやすい宣伝物をつくって拡散することなど、各地でのこれまでの取り組みを通じて、様々な経験やアイデアが出された。
 私は、九月に沖縄に行ったということもあり、沖縄での不屈のたたかいに学び励まされた。米軍によるあらゆる場面での支配の実態(沖縄だけでなく日本全土に及ぶ)、アメリカは日本を守るどころか日本を拠点に戦争するのだということ、改憲によって自衛隊が米軍に組み込まれてかえって命の危険が増すこと、ごぼう抜きされ続けても座り込みを続け基地建設を大幅に遅らせているオール沖縄のたたかいについて、学習会の講師をする時には必ず話すようにしている。なお、一二月には東京法律事務所で「沖縄と核」をテーマに講演企画を実施する予定である。
 憲法九条改正についての世論調査は、辛うじて毎回必ず反対が過半数となる。七〇年以上維持してきた九条の反戦平和の精神(戦争体験者が戦争体験を語り続けてきたことによって培われてきたと思う)が日本国民に根づいており、改憲で戦争で自分や家族、友人知人の命が失われるかもしれないことがわかれば、多くの国民は必ず反対に立ち上がると信じたい。分散会での議論に参加して、あらためて感じたところである。


二〇一七年総会分散会憲法問題発言要旨

広島支部  井 上 正 信

 一〇月三重総会分散会において北朝鮮問題について私が発言した内容に少し補足して文章にしました。
 私たちは北朝鮮問題にどのように向き合うのか?
 憲法九条護憲論の本気度が問われている
一 北朝鮮問題とは何か
 北朝鮮問題とは何かと問われて、ほとんどの人やマスコミは北朝鮮の弾道ミサイルと核兵器の脅威と答えるであろう。しかしこの答は二重の意味で誤っていると思う。まず。北朝鮮をめぐる脅威の中で、弾道ミサイルと核兵器の脅威は北朝鮮問題の派生的な問題にすぎない。次に、脅威なのは北朝鮮だけではない。こちら側も脅威を構成しているのだ。
 北朝鮮問題とは、冷戦終結後も北東アジアにおいて冷戦の遺構を根強く残し、北東アジアにおける分断と対立、軍事的緊張関係を作り出す最大の要因だ。この取り扱いを失敗すると、大規模地域紛争(湾岸戦争規模)となり、その際には核兵器の使用の危険性もある。
 北朝鮮問題に向き合う場合、この戦争を起こしてはならないことが絶対条件だ。
 北朝鮮問題の最大の要因は朝鮮戦争だ。日本の敗戦後朝鮮民族による統一国家樹立に失敗し、国際社会の介入により分断国家が作られ、南朝鮮では内戦状態にあったところへ北朝鮮が総力を挙げて韓国へ武力侵攻し、国際社会が武力介入した結果、二〇〇万人を超える死者を出しながら停戦し、その後は平和条約の締結もなく、六四年にわたり戦争状態が続き、非武装地帯を挟んでそれぞれ韓国側五〇万人、北朝鮮側七〇万人の兵力が対峙している。
 朝鮮戦争では原爆使用も計画されて、沖縄と空母へ核兵器が配備され、休戦協定締結まなしに米韓相互防衛援助条約が締結されて在韓米軍が駐留し、九二年に撤去されるまで韓国には北朝鮮を標的にした戦術核兵器が配備されていた。このことは北朝鮮が核兵器に強く固執する歴史的要因だ。
 日米同盟も北朝鮮を標的にした軍事同盟だ。
 北朝鮮は国連加盟国の中で日本が唯一国交のない国で、米朝間にも国交がない。
 日本政府には包括的な北朝鮮政策はない。北朝鮮問題を歴史的、包括的にとらえた戦略的な北朝鮮政策が必要だ。
二 北朝鮮脅威論と向き合う
 最大の脅威は朝鮮半島での大規模武力紛争だ。これが勃発すれば、北朝鮮と韓国は壊滅的被害を受け、日本も甚大な被害を受ける。核兵器による被害も想定されている。
 朝鮮半島では武力紛争の危険水域に近づきつつある。トランプ政権と安倍政権の北朝鮮政策が脅威を増幅させている。北朝鮮から見れば、米韓同盟と日米同盟が最大の脅威だ。北朝鮮と米国の核兵器が脅威のレベルを飛躍的に高めている。核抑止力が平和と安全を維持しているのではなく、核兵器の存在自体が脅威を増幅しているのだ。
 どのように向き合うのか?
 北朝鮮の脅威を削減するための方策は次の三つ。
 前提として、六四年にわたる分断と対立、そこから生まれる相互の根深い不信感が存在していることを認識すべきであろう。互いに相手を脅威と認識しているのであるから、北朝鮮だけを脅威とするのではなく、こちら側の脅威も削減しなければならない(脅威の相対化)。
(1)北朝鮮の脅威を物理的に破壊し一掃する。
 これは国際法と国際関係からとりえない。
(2)軍事的抑止力を高めて北朝鮮の脅威を封じ込める。
 安保法制と憲法九条改正の立場。制裁の強化と軍事的圧力で金正恩に白旗を掲げさせようとする。これだけでは絶対成功しない。軍事的緊張関係が高まり偶発的な衝突から本格的な武力紛争となるリスクを高めている。
(3)「安心の供与」を含む外交手段で脅威を削減する。
 経済制裁は外交手段の一つ。これだけでは成功しない。北朝鮮との対話が不可欠。対話を通じて「安心の供与」をすることで、互いの脅威を削減することが必要だ。「安心の供与」とは、相手に対してこちら側も脅威にはならないとの安心感を与える外交政策だ。
三 憲法九条と北朝鮮問題
 北朝鮮脅威は憲法九条改正とは無関係、次元が違う問題だ。北朝鮮は九二年以降世界最大の軍事国家米国と瀬戸際外交を続けており、まったく抑止されていないし、弾道ミサイルと核開発は解決されず、深刻化している。日本が九条を改正して国防軍を持ったところで、この構造には何ら影響を及ぼさない。問題は憲法九条にあるのではなく、我が国の北朝鮮政策にある。
 安倍政権には包括的な北朝鮮政策はない。場当たり的な脅威対抗政策だけだ。これは九条に反する政策だ。
 憲法九条こそ北朝鮮問題を解決するための包括的北朝鮮政策に生かされるものだ。金正恩政権が最も望んでいるのが、体制保障と経済発展だ。そのためには日朝・米朝国交正常化、朝鮮戦争終結のための平和条約締結、米国による消極的安全保証(核攻撃しないとの保証)の法的誓約(条約による誓約)、不可侵条約締結、経済制裁解除と経済支援など。これらは六者協議の中でほとんどは合意され、一部は実現してきた。
 一九九四年一〇月ジュネーブ合意(枠組み合意)では、III(1)で米国は北朝鮮に対して核兵器による威嚇、攻撃をしないと保証しているし、二〇〇五年九月二〇日六者協議の合意文書の中に「米国は、朝鮮半島において核兵器を持たず、北朝鮮に対して核兵器あるいは通常兵器による攻撃または侵略の意図がないことを確認する。」としているのだ。六者協議において経済援助を実施したり、経済制裁を解除した。二〇〇七年二月六者協議合意文書「初期段階の措置」では、米朝、日朝国交正常化、朝鮮戦争の平和条約締結、北東アジアの地域的安全保障の枠組み構築を含む五つの作業部会設置を合意している。
 二〇〇八年一二月以降中断している六者協議の再開が不可欠だ。日本を含む全会一致で採択された二〇一七年八月六日安保理決議二三七一号も六者協議再開を要請している。
 憲法九条は日本と諸国の平和と安全を維持するために、日本が非軍事的な安全保障政策、外交政策を求めている。現在の軍事的緊張関係を武力紛争にせず、北朝鮮問題を包括的に解決するためには、日本政府による北朝鮮との対話のイニシアチブが重要だ。トランプ政権に対しては、北朝鮮へ武力攻撃をしないことを強く求めなければならない。
 憲法九条改正は北朝鮮問題の平和的解決の望みを断ち切るものだ。許してはならない。


生業訴訟を通じて感じたこと

福島支部  鈴 木 雅 貴

 一〇月一〇日、福島地裁にて「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の判決が出されました。国と東電の責任を認め、中間指針の基準を面的かつ金額的に上回る慰謝料の支払いを命じました。
 生業訴訟判決は、ふるさと喪失慰謝料について実質的に認めなかった点や福島県の会津地方に対する慰謝料の支払いを認めなかった点で問題はあります。しかし、この判決は、被害住民に希望と勇気を与え、被害者救済を一歩も二歩も前進させ、原発事故被害の根絶・原発ゼロ社会の実現に大変資する画期的な判決だと理解しています。
 二〇一三年三月一一日に原告八〇〇名で提訴し、地裁判決まで四年七か月かかりました。私は二〇一一年一一月に司法修習生として福島市に来ました。原発事故の年の福島の様子はわずかしか知りませんし、避難指示区域はなぜか足が向かず、検証準備までそれほど訪れたことはありませんでした。
 それでも、当時、福島駅周辺で、ガイガーカウンターを片手に子どもの手を引っ張り、険しい顔をして歩くお母さんの姿は、今でも目に焼き付いています。
 また、同じ市内で同じ時期に、比較的放射線量が高そうな山中の公園で、体力づくりのためか、子どもたちを走らせているお父さんもいました。なぜこの場所で子どもたちを走らせているのだろうかと疑問に思いました。
 その方たちに直接話を聞いたわけではないので、勝手な想像でありますが、被ばくの問題を気にする人は気にするし、気にしない人は気にしないと、安易に理解してはいけないと思っています。
 そのお母さんのような行動を取っている方は、それ以降、一度も見たことはありませんが、公園や屋外で遊ぶ子どもたちがとても少なかった時期は福島市内でも確かにありましたので、親御さんたちは子どもたちをできる限り被ばくさせないように心を砕いてきたのだと思います。「『母親の取り越し苦労が人類を救ってきた。』という医師の話を聞き、救われる思いがして涙が流れた。」というお母さんもいました。
 福島は農業県ですので、そこら中に自家菜園がありますが、数年間は自粛されており、雑草が生い茂っていたということもよく見受けられました。
 原発事故前の福島での当たり前の生活が、放射能汚染により制約を受け、何をするにしても被ばくのことをいやがおうにも考えさせられる。先ほどの子どもたちを走らせていたお父さんについても、私のような感想を抱く周囲の目・家族の声については考えつかないはずはありません。
 ある中学生が、「福島の人は放射能とどう付き合っていくかを真剣に考え始めている」と地元紙に寄稿していました。原発事故の翌年の投稿でしたが、被ばく=福島=怖いという社会通念がある中で、一定の被ばくは受け止めながら、大切な郷土である福島でどう豊かに生きていくのかを真剣に考えた意見に触れて、素晴らしい意見だなと率直に思いました。それと同時に、放射能と付き合うという言葉は、本来的には共存できないものと郷土が一体化してしまった。その中で生活しなければならない苦悩と、それでも生活をしていくのだという決意を端的に示すものだとも思います。
 生業訴訟判決においては、被侵害法益(平穏生活権)について「人は、その選択した生活の本拠において平穏な生活を営む権利を有し、…(中略)…社会通念上受忍すべき限度を超えた放射性物質による居住地の汚染によってその平穏な生活を妨げられない利益を有しているというべきである。ここで故なく妨げられない平穏な生活には、生活の本拠において生まれ、育ち、職業を選択して生業(なりわい)を営み、家族、生活環境、地域コミュニティとの関わりにおいて人格を形成し、幸福を追求してゆくという、人の全人格的な生活が広く含まれる。」と言及されています。
 原発事故前の当たり前の生活を返してくれというのが、原発事故被害者の一番の願いです。判決は、原告だけでなく福島県民の多くが、放射能汚染により、平穏生活権の侵害を受けた事実を認定しました。十月二三日に当事者双方が控訴をし、闘いはまだまだ続きますが、早期解決を目指して、引き続き、尽力したいと考えております。
 本稿は、中野直樹先生から「鈴木君、団通信に生業訴訟判決の旗出しのことを書いてくれないか。そのあとの号で、馬奈木さんは、生業訴訟判決の概要について書いてね。」と言われて書き始めたので、旗だしについても触れようと思います。
 旗だしは、福島現地の若手弁護士をということになり、藤原泰朗団員、関根未希団員、私の三名で行うことになりました。
 諸先輩からは、「旗だしに行くまでに転倒するな」、「上下を逆にしないこと」、「表裏を逆にしないこと」等難しい注文をいただき、大変緊張しました。
 三人が旗を出したところ、裁判所前に集まっていた六〇〇名ほどの原告・支援者の皆さんが大歓声で迎えてくれました。
 そのうちに、「再稼働反対!」「原発なくせ!」のコールが自然発生的に始まり、皆さんの心からの切実な願いとして大きな声でコールが続きました。
 大事なふるさとに原発は要らない。一日も早く、日本中の人がそう思えるように、原告の皆さんとともに二人三脚で、時には全国行脚(キャラバン)しながら、頑張っていきたいと思います。


ナチスとよく似た安倍の北朝鮮問題対応

滋賀支部  玉 木 昌 美

 安倍首相が三か月間にわたって憲法五三条に基づいて請求された国会を開かず、冒頭何の説明もしないままに大義のない解散に踏み切り、選挙となった。安倍首相は、ウソをついて憲法違反の法律(特定秘密保護法、戦争法、共謀罪)をつくり続け、「国民に説明をする。」とだけ繰り返しながら、何も説明せず、「一億総活躍」等美しいスローガンだけを次々とぶち上げ、実際の政策はまったく逆のことをし、国民が忘れることを待った。国民を愚弄する点でピカイチの首相である。総選挙の結果は、一定の野党共闘は進み成果があったものの、民意を反映しない小選挙区制のもとで改憲勢力が三分の二以上を占めた。
 総選挙では、安倍首相は北朝鮮問題を大きく取り上げ、ミサイル危機を煽り、「国を守る。」と声高に叫んでいた。ナチスのゲーリングは、「国民を戦争に参加させることは常に簡単なことだ。わが国は攻撃されつつあると言い、平和主義者を愛国心に欠けていると非難し、国を危険にさらしていると主張する以外には何もする必要がない。」と言っているが、それと同じである。戦前の日本もそうだった。
 安倍首相の政策はどうやって国を守るのかといえば、日米同盟を強化して、アメリカの軍事力の抑止力に頼るというものである。原発だらけで再稼働までしている日本、人口が密集している日本を軍事力で守ることはできない。北朝鮮からのミサイルを撃ち落とすようなミサイル防衛は軍事的にも不可能である。一発のミサイルでも軍事技術的に撃ち落とせるか疑問とされており(発射場所、発射時刻、方向等が事前に知らされる必要がある)、ましてや数十発すべてを撃ち落とすことが不可能であることは誰も否定できない。一発でも原発や人口密集地帯に命中すれば終わりである。このように、五兆円を超える軍事費は日本の防衛にほとんど役に立たない。また、安倍首相は、四億円近くかけてJアラートを鳴らし、領空を飛んでいないミサイルを日本に向けて発射されたように国民に伝えて危機を煽っているが、建物の中に隠れてもミサイル攻撃、核攻撃から逃れることもできず、どうすることもできない。安倍首相は挑発をしても、どうやって日本の安全を保障するのか何も説明していない。避難訓練で児童に頭を地面につけるように指導してもおよそ無意味である。「竹やりで米軍に立ち向かえ。」とやっていたことと同レベルの荒唐無稽なことである。
 そもそも北朝鮮は日本を攻撃しようとしているのではなく、アメリカに対する発言権を確保するには軍事力で対抗できる力を持ちたいということにほかならない。核兵器を重視するのも、アメリカ等先進諸国と同様の考えである。
 ちなみに、軍事力で北朝鮮に対応するとなれば、一発のミサイルも発射させないように事前に叩きつぶすほかなく、核兵器で国そのものを消滅させるしかない。こうした先制核攻撃を誰も肯定することはできない。
 北朝鮮問題は、どのようなことがあっても、戦争を避ける、偶発的にも軍事衝突を起こさないことが不可欠であり、そのためには当事国が対話をし、あらゆる外交努力が必要となる。国連でもそうした議論が主流である中、安倍首相は、「対話ではない、圧力をかける。」と、ひとりトランプの妄言を支持し、緊張関係を高めるように煽り立てている。およそ国民を戦争の危機に追いやる、「国難」を招く愚かな態度である。
 日本はアメリカの「核の傘」にあり、そのために核兵器禁止条約に反対した、と主張している人がいる。アメリカは同盟国のために核戦争することはなく(すれば国際法上違法)、「核の傘」はない。アメリカは日本のために闘うのはそれがアメリカの国益にかなうときだけであり、安保条約五条の対象だといっても、「誰も住んでいないどうでもよい島」尖閣のために中国と戦争をする可能性は考えられない。
 ゲーリングの言葉のように、一般的に誰もが否定しにくい国防であるが、それだけに国防を自由や権利に優先すれば、その先には戦争しかない。これは歴史の教訓である。安倍首相の行きつく先は、改憲して戦争をする国、特にアメリカの戦争に付き従うことになる。
私たちは安倍改憲を許さず、「日本はどんなことがあっても戦争をしない」という九条の立場を貫き、軍事力によらない外交その他で最善を尽くすべきである。また、軍隊を海外に派遣しない、自衛隊は発砲しない、という「平和国家のブランド」を維持し、丸腰で紛争当事国に分け入って仲裁に入り、国際平和に貢献していく必要がある。また、核兵器禁止条約に賛成して推進し、あらゆる国の核兵器を廃絶するという立場を貫くべきである。北朝鮮の核兵器だけなくせばよいのではない。
 安倍改憲を許さない新たな市民運動を、三〇〇〇万人署名運動を、創意工夫を凝らして進めていく必要がある。


滋賀支部八月集会に参加して

女性の法律事務所パール  瀧 澤 順 子

 平成二九年八月二九日、大津市で八月集会を実施しました。「八月集会」とは五月集会の滋賀版で、弁護士・事務局・各種団体とで学習や交流を深めることを目的としています。今年の八月集会では各団員の先生からの活動報告と生活保護問題の意見交換会、記念講演会の三部構成で行いました。
 今年の活動報告では、原発差し止め訴訟、日野町えん罪事件、訴訟能力を争う窃盗事件、子宮頸がん訴訟、こだま保育園解雇事件仮処分勝訴報告と幅広い分野の報告がありました。普段あまり聞けない他事務所の先生方の活躍が聞けてとても勉強になりました。
 そして、岡村正淳先生をお招きしての記念講演会が開かれました。「風成闘争から学んだこと」と題して、岡村先生から、住民による大阪セメント誘致のための埋め立て反対闘争についてご講演頂きました。漁業権放棄手続きの無効を理由とする漁業権確認訴訟、埋立免許取消訴訟で勝訴判決を勝ち取り、海を守り抜いた闘いについてのお話しは体験したことがないお話しばかりでとても胸を打たれました。また、風成は何故こんなにも闘えたのか、それは風成の女性たちの純粋でひたむきな運動の強さが大きかったという岡村先生のお話しに、まだ、今と比べて女性が社会進出していない時代に女性の参加がこの運動を支えたことに感動しました。
 八月集会終了後、多くの団員の先生方や事務局が参加して懇親会が開かれました。集会とは異なり、打ち解けた雰囲気で話に花が咲きました。毎年実施されている一言スピーチでは、みなさんの個人的な近況や集会の感想などを知る事が出来ました。集会と懇親会を通して先生方や事務局のみなさんが熱い思いを胸に仕事をしていらっしゃる事を知れ、自分自身も明日から頑張ろうとパワーをもらいました。