<<目次へ 【意見書】
第二 本 則
改正の内容は、既存の「特措法」に、本則三条と五項からなる附則を加えるものである。
以下では条文に沿って、逐条的に解説を行う。一五条一項 防衛施設局長は、駐留軍の用に供するため所有者若しくは関係人との合意又はこの法律の規定により使用されている土地等で引き続き駐留軍の用に供するためその使用について第五条の規定による認定があったもの(以下「認定土地等」という)について、その使用期間の末日以前に前条の規定により適用される土地収用法第三九条第一項の規定による裁決の申請及び前条の規定により適用される同法第四七条の二第三項の規定による明渡裁決の申立て(以下「裁決の申請等」という)をした場合で、当該使用期間の末日以前に必要な権利を取得するための手続が完了しないときは、損失の補償のための担保を提供して、当該使用期間の末日の翌日から、当該認定土地等についての明渡裁決において定められる明渡しの期限までの間、引き続き、これを使用することができる。ただし、次の各号に掲げる場合においては、その使用の期間は、当該各号に定める日までとする。
一 裁決の申請等について却下の裁決があったとき
前条の規定により適用される土地収用法第
一三〇条第二項に規定する期間の末日(当該裁決について防衛施設局長から審査請求があったときは、当該審査請求に対し却下又は棄却の裁決があった日)
二 当該認定土地等に係る第五条の規定による使用の認定が効力を失ったとき
当該認定が効力を失った日
一 要 件
暫定使用の要件は、@認定土地等であること、A期限切れ以前に裁決申請等がなされたこと、B期限切れ以前に手続が完了していないこと、C担保を提供すること、である。
1 対象土地が、認定土地等であることが、第一の要件である。
「認定土地等」というのは、米軍のために、日本国が提供している土地で、今後も提供し続けるとして、内閣総理大臣が使用認定を行った土地のことである。地主との契約(合意)によって提供していた土地であるか、米軍用地特措法によって強制的に使用している土地かは問わない。
それまでは国と契約を結んできた地主が、もうこれ以上米軍には土地を提供したくないと考え、以後の契約を拒否するとどうなるかといえば、国は、使用認定をして裁決の申請をする。そうすると仮に期限が切れても暫定使用によって使い続けるという仕組みになっている。以前から強制使用されてきた土地についても当然に使用認定がなされ暫定使用が認められる対象となる。
2 第二の要件は、使用期限切れ以前に、裁決申請等がなされていることである。収用委員会の行う裁決には、権利取得裁決と明渡裁決があるが、そのいずれについても期限切れ前に申請・申立を行っておくことが条件となっている。
国(米軍)が土地を基地として強制的に使うためには、所有権あるいは賃借権という権原が必要となり、これを得るためのものが権利取得裁決の申請(土地収用法三九条)である。また、使用する土地に人が住んでいたり障害となる建物等があっては困るのでこれを排除するのが明渡裁決の申立(土地収用法四七条の2三項)である。
もっとも、既に基地として使われている沖縄の場合は通常、権利取得裁決申請と明渡裁決の申立は同時になされ、裁決書も一体で書かれる。
この裁決申請等は、使用認定の告示があったときから一年以内に行う必要がある(土地収用法三九条一項)。沖縄の場合、地主たちが土地物件調書への署名押印を拒否したり、知事が「代理署名」を拒んだため、国は、職務執行命令訴訟等の手続きをとらざるをえなかったが、右期間内の裁決申請等がなされた。その結果、本改正案が成立するならば、仮に期限切れとなっても暫定使用として使い続けることが可能となる。
3 第三の要件は、使用期間の末日以前に、権利取得の手続が完了していないことである。
使用期間内に手続が完了しておれば暫定使用など認める必要がないのであるから、当然の規定である。
4 第四の要件は、損失保障のための担保を提供することである。
内容は、一五条二項の解説に譲る。