宇賀神 直 | 2001年記念総会と創立80周年記念行事に参加しましょう | |
小口 克巳 | 80周年記念行事、記念総会で21世紀を語ろう | |
2001年総会のご案内 | ||
三嶋 健 | 8月15日、終戦の日小泉首相の靖国神社参拝に抗議し、平和をうったえる宣伝行動の報告 | |
中野 直樹 | 日米共同声明の訳をめぐって学んだこと | |
論文紹介 | 高橋 融 | アメリカのなれ合いは、日本の過去に扉を閉ざす |
自由法曹団二〇〇一年全国総会は一〇月二七日(土)東京は神田一ツ橋「教育会館ホール」で開催されます。その前日の二六日(金)には午後一時から弁護士会館会館で構成劇、三時からリレートーク、六時から東京ドームホテルで記念レセプションなどの創立八〇周年記念の行事が行われます。
今を去る八〇年前の一九二一年八月二〇日、弁護士たち約七〇名が日比谷松本楼に集まり自由法曹団を結成しました。自由と人権を何よりも大切にし、それを護る弁護活動を集団で行なうことの意義を認識した弁護士たちです。当時の情勢のもとで弁護士が個人的に活動すのではなく集団で行なう、そのために団体を結成したことに画期的意義があります。自由法曹団を結成したことで労働者、農民、勤労市民の生活と権利を護る闘いに参加する弁護士の活動力は増大しました。また、弁護士の自覚的活動も高まりました。
さて、現在、自由法曹団の当面する課題は司法の民主化・司法改革、個々の裁判闘争、憲法問題など極めて多くの課題があります。更に小泉内閣の「聖域なき構造改革」実施の如何では企業の倒産、リストラ・大量首切りなど社会問題、法律問題が発生し、否応なく団員の出番が求められます。それらの取り組み、闘い、解決に当たって我が団の八〇年の歴史に学ぶことが大切です。その思いで団創立八〇年周年を成功させたいと思います。二一世紀初めの大きな取り組みです。
その成果を受けて二一世紀初めの全国総会を盛り上げたいと思います。総会は午前、午後の一日で終わります。団員の皆さん、それぞれの思いを巡らせて全国総会と記念行事に参加しようではありませんか。
1 団の歴史を語り、学び、みずからを検証しよう
二〇〇一年一〇月二六日(金)は、自由法曹団八〇周年記念行事が開催されます。翌日一〇月二七日(土)に、神田一ツ橋の教育会館大ホールで二一世紀最初の自由法曹団総会を開催します。先輩達が幾多の苦難のなかで築き、育ててきた自由法曹団も一五五〇名の団員を擁して二一世紀のたたかいに大きく踏み出しています。
期前の団員こそ少なくなりましたが、上は期前、司法修習一期生から五四期(一〇月登録予定)に至るまで実に五〇年以上離れた年齢層の団員が蓄積したたたかいの教訓を新しいエネルギーに支えられながら存分に生かして国民のためのたたかいを進めてきました。この記念すべき総会に多くの団員が全国から参集され、団を語り、二一世紀を語り、みずからのあり方を語り合おうではありませんか。
2 二〇〇一年総会をめぐる情勢
小泉内閣発足から早いものですでに五ヶ月近く。その危険性はあらゆるところで明らかになってきました。靖国神社参拝は歴代の首相がこの一五年間躊躇し続けたものです。A級戦犯が合祀されてから「参拝」は差し控えられ続けてきました。
教科書問題では、「新しい歴史教科書をつくる会」作成の教科書を全国各地で無理矢理にでも「採択」させようという激しい圧力があり、これを民衆の力が押し返しました。この中で団もその一翼を担って奮闘しました。
ネオナショナリズムの台頭は、軽視できないところまで来ています。有事立法の具体化の動きが表に出てくるのも遠くないものと危惧されます。集団的自衛権行使が叫ばれ憲法の明文、解釈両面から危機を迎えようとしています。
教育にも手がつけられています。六月に成立した教育三法は教育に国家が大きく介入する可能性を与えたものでした。「指導が不適切」「指導力不足」という口実のもと、教科書採択でその危険性が露呈した「教育委員会」が授業のチェックや教員人事に大手を振って入り込む水路が開かれているのです。秋には教育基本法に手をつけ、「子どもの人権としての学ぶ権利・学習する権利」から「人材育成のための、金儲けのための教育」「国際競争に勝つための人材育成」へと教育の軸が振れてきています。国民の要求を対置したたたかいが求められます。
司法改革は、いよいよ立法段階に入ろうとしています。支配層は国民の声を聞かないで改革の方向を定めようと躍起になっています。立法化の段階こそさらなる国民運動が必要になっています。しかし、今ほど司法に対する国民の関心が高まっているときはありません。将来の司法のあり方をめぐっての重大局面が続いています。
労働の分野で規制緩和、リストラ、合理化のあらしが吹きまくっているのは言うに及びません。これに対する果敢なたたかいが進められています。
新自由主義的改革で資本主義の行き詰まりを打開し、乗り切ろうとする支配層の大規模な国家改造なかに一連の「改革」が位置づけられます。
自由法曹団はこうした時代全体を読み、その中で団員一五五〇名の総力で全分野での有機的に結合した団結したたたかいをしていく必要があります。一騎当千の団員が個別に果敢にたたかうというのだけでなく、老いも若きも、ベテランも新人も、条件がある人も限られている人も力を合わせて大きなたたかいの部分部分を担いあって新しい時代を切り開くそのための旺盛な議論、方針決定の場が総会であり、記念行事の場です。
3 二一世紀初の総会の持ち方について
今回の総会は、二六日の記念行事と二七日の総会との二つの部分に分かれます。一日目は弁護士会館クレオで開催、前半は構成劇で自由法曹団のたたかいを象徴するいくつかのテーマを通じて自由法曹団とは何か団員のナマの生き様とは何かという問題提起をしていきたいと考え実行委員会が企画を準備中です。ご期待ください。
第二部は、おおむね三時頃から小森陽一・東京大学教授、山住正己・都立大学前総長、西川征矢・全労連副議長、川田龍平氏、そして若手団員のリレートークで二一世紀に向けての平和、人権、民主主義についてのメッセージを発信したいと企画を進めています。
夕刻の六時からは、東京ドームホテルで記念レセプションを企画しています。大いに語り、関係団体、個人とも絆を深める場としていきたいと考えています。
自由法曹団八〇年を振り返り、二一世紀に向けたあり方を立ち止まって考える場として、しかも友好団体とともに考える機会としていきたいと考えます。
総会は二七日一〇時から四時までの全一日で行います。今年からは古稀団員が二三名と多数になります。代表しての挨拶ですが、団の歴史と教訓をくみ取る貴重な場になっています。
全体討論は、記念講演などを予定しない分多くの時間が確保できます。四時間から五時間かけて憲法、司法、教育、労働など様々な分野のたたかいの現状と課題を要領よく討議し、二一世紀最初の総会にふさわしいものとして充実させたいと考えます。全国から成果を持ち寄り、議論に参加いただきたいくお願いいたします。
4 新人学習会について 以上のようなわけで、自由法曹団を知り、その歴史に学び、友好団体と交流する。こうした企画全体が新人弁護士、団員にとってのまたとない学習の機会です。今回は新人学習会と銘打っての企画はありません。特に新人の方は、全企画を通して参加するようにしてください。そして、各支部、各事務所では新人が参加できるよう最大の配慮をしていただくようお願いします。そして、総会までに入団手続きを済ませていない方も記念行事、総会を機会に入団の手続きをしていただきたく併せてご案内いたします。
5 法律事務所事務員の参加について 日常の活動のなかで、自由法曹団団員の事務所を支え、あるいは諸活動に参加している事務員の皆さんも団の活動の一翼を担って活躍されています。記念行事、レセプション、総会といずれも今後の活動、日常業務、さまざまなたたかいの糧となるものばかりです。ふるって参加されるよう、また、団員の皆さんも事務局員の参加を勧めていただきたくお願いするものです。
日程のあらまし
10月26日(金)
午後1時〜5時
「二一世紀をきりひらくー自由法曹団創立八〇周年記念のつどい」
@構成劇「正義を求めて ー民衆とともに」
Aリレートーク「憲法・人権・二一世紀」
憲法・教育問題について
小森陽一氏(東京大学教授)
山住正巳氏(東京都立大学前総長)
労働問題について
西川征矢氏(全労連副議長)
新しい人権を守るために
川田龍平氏(HIV訴訟元原告)
国宗直子団員(熊本支部・ハンセン病訴訟弁護団)
[会 場] 弁護士会館2階クレオ
東京都千代田区霞が関一の一の一
地下鉄霞が関から徒歩一分
午後六時〜
「自由法曹団創立八〇周年記念レセプション」
[会 場] 東京ドームホテル地下一階「天空」
東京都文京区後楽一の三の六一
JR総武線・都営地下鉄三田線「水道橋」駅より徒歩二分、営団地下鉄丸の内線・南北線「後楽園」駅より徒歩五分
※「記念のつどい」の会場(弁護士会館)からの移動は、地下鉄丸の内線での移動が便利です。
この日は、創立八〇周年記念行事として、団員・法律事務所の方々の多数の参加を求めます。あわせて、広く団外にも呼びかけて参加してもらうことにしています。
10月27日(土)
午前9時30分〜午後4時30分
「二〇〇一年総会」
[会 場] 日本教育会館ホール
東京都千代田区一ツ橋二の六の二
一、三〇名で一〇〇〇枚のビラを配布
八月一五日、五六回目の終戦の日でした。私達は例年のことですが、川崎市内の労働組合、川崎市会議員団、民主団体と川崎の駅頭で、午後四時から、反戦を訴える宣伝行動をしました。お盆休みの時期で、お盆休みをとっている人達が多くてどれほどの人が参加してくれるか心配したのですが、教職員連絡会、平和委員会、原水協、民商、新婦人、川崎市会議員団など一一団体、三〇名(内川崎合同法律事務所八名)が参加し、宣伝活動をしました。
二、関心を呼んだ宣伝活動
今年は、戦前の日本を美化する価値観に貫かれた「新しい歴史教科書」及び同様の「公民」教科書の採用問題があり、また、小泉首相が、内外の反対を押し切って、八月一三日に靖国神社の公式参拝を強行しましたために、人々の関心が非常に高かったと思います。
私達は、小泉首相の靖国参拝への抗議を横断幕にかかげ、アピールしました。ビラを読んで反感を示す人もいましたが、多くの人は共感を持ちつつ、演説に耳をかたむけていました。
午後四時という、通行人が必ずしも多い時間帯ではなかったのですが、用意したビラ一〇〇〇枚が、三〇分ほどで、あっという間にはけてしまい、手持ちのビラがなくなって手持ちぶさたになった参加者もいて、あわてたほどです(但しハンドマイクを使っての演説は時間通りやりました)。
私達の宣伝活動が始まる前に、右翼の宣伝カーがうろうろしたりして、緊張する場面もありましたが、混乱はありませんでした。
お盆という活動をしにくい時期だったのですが、人々の関心の高さを目の当たりにし、今年もやってよかったと思います。
三、平和の誓い新たに
憲法調査会の動向、歴史教科書問題、靖国神社参拝強行など、憲法の平和主義に挑戦する動きが目立っています。
私達は、戦前を美化する策動を許さず、今後とも、憲法の平和主義を守るために頑張りたいと思います。
川崎での闘いは通年闘争として取り組まれ、このあと一一・三行動、一二・八行動(集会とデモ)が予定されています。
一 沖縄・改憲対策委員会は、改憲の動きを把握する際に、憲法調査会を表舞台とする改憲論議の内容、新自由主義改革による国家改造の進行、アメリカのアジア戦略の動向の三つの観点で検討してきている。最近はここにネオ・ナショナリズムの台頭が加わり、なかなか忙しい。
二 二〇〇〇年一〇月に、アメリカの対日研究グループが今後の対日・アジア政策の長期・計画的な方向性をつくる報告文書を出した。中心人物の名をとって「アーミテージ・レポート」と呼ばれている。アーミテージを含めた何人かがブッシュ政権の国防、外交関係の重要ポストに就いたことからも重要な基本文書と位置づけられてよい。対策委員会では、五月集会の分科会で全訳文を配布し、その特徴を紹介した。
このレポートは、総論に続いて、政治、安全保障、沖縄、情報、経済的な関係、外交の六つの個別テーマをもうけ、それぞれ現状と課題について踏み込んだ記述をしている。
安全保障の箇所で、現状について次のように記されている。「アジアで紛争が起こる可能性は、米日防衛関係が周辺の目にはっきり映り、現実的なものであることが理解されることによって、劇的に低くなった。日本の提供による在日米軍基地の使用で、米国は太平洋からペルシャ湾に至る安保環境に影響力を行使することができる。日米防衛協力のためのガイドライン改訂版は、日米共同防衛計画の基礎となるものである。しかし、太平洋全域に広がった日本の役割の下限を定めたものとみなすべきで、上限を示すものではない。」
そのうえで、このレポートは「日本による集団的自衛権の禁止は米日間同盟協力にとって束縛となっている。この禁止を取り払えば、もっと密接で、もっと有効な安保同盟となるだろう」と苛立ちを示す。そして「米国と英国のような特別な関係が米日同盟のモデルだと、われわれは思う」としたうえで、「新ガイドラインの誠実な履行。有事法制の国会通過を含む。PKFの参加凍結解除。TMDに関する日米協力の範囲を拡大しなければならない」と露骨な願望を示した。
このレポートは、森前首相の有事法制の立法化を前提とする検討開始発言を生み出し、にわかに集団的自衛権が改憲論議と結びついて声高に主張され始めるきっかけをつくった。
三 根っからの親米を公言する小泉首相は六月末に訪米し、ブッシュ大統領との間で共同声明を出した。外務省のホームページには「安全と繁栄のためのパートナーシップ」(仮訳)として掲載されている。なぜ仮訳しかないのか納得がいかない。共同声明全文を載せたのは、七月一日付日経新聞と七月二日付けしんぶん赤旗のみで、日経新聞は、外務省の仮訳をほぼそのまま載せたものであることがわかった。
共同声明は、外務省仮訳では、平和と安定のための協力、成長のための経済パートナーシップ、地球的規模の課題における協力、揺ぎない同盟におけるパートナーの四項目から成る。最後の「揺ぎない同盟」については、赤旗は「永続的同盟関係」と訳している。英語は「ENDURING ALLIANCE」であり、英和辞典で確かめる限りでは、赤旗訳の方が正確に思える。
七月の対策委員会で、共同声明「平和と安定のための協力」の項目の英文第二段落冒頭の訳をめぐって重要な指摘がなされた。
外務省仮訳は「両首脳は、日米防衛協力のための指針の継続的な実施を基礎として、安全保障協力における今後の方途につき様々なレベルで安全保障協議を強化することを決定した。」となっており、日経新聞の全文もほぼ同じである。「安全保障協力における今後の方途につき」は日本語としてこなれておらず、意味不明であるが、全体の印象で、新ガイドラインの具体化を約束しているのかと読んでしまう。
これに対し、赤旗訳は「両首脳は、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の継続的な実施を基礎として、安保協力を新たな段階に進めるために、さまざまなレベルで安保協議を強化することを決めた」としている。これによると、新ガイドラインの枠を超えた新たな段階に踏み込むために、という意味となり、重要な基本政策の変更となる。そこで、英文がどうなっているのか確かめることとなり、外務省のホームページにあたった。英文では「…intensify con-sultations at various levels on further steps in security cooperation ,…」と記されている。辞書を引き、念のため国際問題委員会の菅野委員長にも相談して、「on further steps 」は「数歩前進するために」との意味をもつことから、赤旗訳の方が素直で、ベターという結論となった。
続けて共同声明が、米本土の「ミサイル防衛に関し、緊密な協議を続けるべきことについて意見が一致した」とうたっていること、アーミテージ・レポートの打出していることを合わせ考えると、集団的自衛権にも踏み込んだ安保協議を強化することを決めた、と読解することが正しいのではないか。外務省が「安全保障協力における今後の方途につき」という意味不明の仮訳を付けた理由も、その重大な政治的な意図を隠すためではなかったのか。
四 この対米約束が、改憲論議の速度を速める力となることに用心が必要である。高い小泉人気のもとで改憲論者が勢いづいている。
対策委員会は、左記の日程で全国会議を開き、改めて情勢を学び直し、この秋のたたかいに向けた意見交換と方針つくりをすることにしました。地域で憲法運動に関与しておられる方をはじめ多くの団員の参加を呼びかけます。
以下は、現在、日本国を被告として慰安婦事件をワシントンにあるコロンビア特別区連邦地方裁判所に提訴している、バリー・フィッシャー弁護士たちの共同論文の粗訳です。私たち、中国人戦争被害賠償請求弁護団は、彼らと協力関係にありますので、翻訳・掲載につき彼らの承認を得ています。
七月六日米国政府は、日本当局に対し、沖縄女性を強姦したとして訴追された米空軍の下士官の身柄を引き渡した。アメリカとしては、このように早く引渡すことは必ずしも要しないのであるが、抗議の嵐は日本中を吹き荒れ、政府の最高幹部がこれを無視できないところまでに至ったことによるものだ。この引渡に引き続いて、日本の小泉首相はアメリカのべーカー駐日大使に対して、在日駐留米空軍の規律の厳守と厳重な指導を求めた。 このように沖縄の一女性の強姦に怒りの声を挙げる国であるからには、第二次大戦中に犯した自分の遺産である大量強姦事件に深い関心を持っているはずだと思うだろう。ところが今日まで日本政府は韓国や中国やその他の国から、一九三〇年代から一九四〇年代にかけて行われた強姦と性奴隷の組織的な計画である慰安婦制度を含む、日本の行った残虐行為の抹消を図る歴史教科書を改訂せよとの要求を拒み続けている。これらの拒絶は日本政府のこれまでの態度からの後退となるだけでなく、日本の教科書に日本が戦時中に犯した侵略の事実を明らかにしようとした一九九六年に行われた国際的な取り組みに違反している。
しかし、どんなことをやっても、事柄を曖昧にすることはできない。慰安婦制度の下で日本政府の手先は、多くの場合強制的にまたは欺瞞的に、朝鮮人、中国人フィリピン人などの少女や女性を誘拐し、アジア全域の占領地に駐留した部隊の気紛れを満足させるための性的な奴隷となることを強制したのである。一生存者は日本の捕囚としての日々を「生き地獄」と表現した。小さなしかも不衛生な部屋に詰め込まれ、生存ぎりぎりの糧をあてがわれ、一日四〇人にサービスをさせられた。脱走しようとした者はしばしば拷問を受けた。多くの者が自殺した。他の者は心にまた身体に一生治らない傷を受けた。
戦争終結から一九九四年までのほぼ五〇年間、日本政府はこのような野蛮な政策の存在自体を認めようとしなかった。生き残った慰安婦自身は、どこにでもある社会のタブーに脅えまた恥じて、一歩踏み出そうとはしなかった。日本政府は歴史学者が慰安婦制度が一九三二年に始まり、一九三七年の南京大虐殺事件(このとき日本軍は二万人から八万人の婦女子を強姦したと推測される)により強化され、日本の占領の下におかれた至るところに次第に慰安所を設置するようになって行ったことを如実に示す文書を公開されて初めて、不承不承認めるようになった。
日本は、これまで慰安婦であった被害者たちに、いかなる補償をも行おうとしてこなかった。しかし、昨年九月勇気ある慰安婦のグループが、日本に対しワシントンの連邦地裁にクラス・アクションを提起した。彼女らは合衆国政府がこの訴訟に同情して日本との解決の協議に入るのに力を貸すことを期待していた。
しかし、実際に起こったことはこの逆である。連邦政府は、四月に意見書を裁判所に提出し、この事件を却下するよう求めた。連邦政府によれば、日本は主権免責により守られるべきだと言う。連邦政府は実際上、組織的強姦、拷問や数十万の殺人は政府の通常な行為と認められるべきだと言っているのだ。
ブッシュ政権は、二〇〇〇年に制定された「密売と暴力の被害予防法」にもかかわらず、日本がその犯罪の結果の責めを受けないようにするために力を貸す決意しているように見える。この法律が、「性的な奴隷や婦女子の人身売買は、アメリカ合衆国創立の基本原則が最も嫌悪するものである」と宣言しているのにかかわらず。
また、合衆国のスタンスが二重基準であることが明らかになった。第三帝国が支配した地域で行われた強制労働により利益を受けた一連の企業に対する事件で、連邦政府はヨーロッパ人被害者の権利を支持し、彼らが数百億ドルの和解をするために力を貸した。しかし、アジア人の被害者に対しては、連邦政府は正義の実現を求める努力を積極的に妨げている。
慰安婦たちが裁判で良い日の目を見るのに、未だ遅過ぎはしない。連邦下院退役軍人問題小委員会の有力者のレーン・エヴァンス議員(イリノイ州選出)は日本が前慰安婦に対し謝罪するよう求める決議案を提出している。水曜日(八月一日を指す−訳者)にはケネディ裁判官の下で日本と合衆国双方が慰安婦事件の却下を求める申立についての弁論が行われる。
日本は自ら犯した犯罪について責任を取らなければならないし、合衆国は世界中のいかなるところでも人権を擁護するイメージが、傷ついたのを回復する行動を取らなければならない。
(ロス・アンゼルス・タイムズ 2001.7.31)
http://www.latimes.com/news/opinion/la-000062192jul31.story?coll=la%2Dnews%2Dcomment%2Dopinions