<<目次へ 団通信1051号(3月21日)
松村 文夫 | 国際航空パイロット解雇事件−整理解雇無効仮処分決定出る− | |
島田 修一 | 憲法調査会に対決していくために | |
上山 勤 | アフガン難民報告・・・その後 | |
後藤 富士子 | 「綱紀審査会」は「丙案」の轍 | |
山口 真美 | えひめ丸事故から一年、今問われていること−パンフレット「えひめ丸事件なぜ起こったの?!」のご紹介 | |
自由法曹団 事務局 |
三月二五日 緊急発刊します!「有事法制 だれのため? なんのため?」自由法曹団編/学習の友社 |
長野県支部 松 村 文 夫
一、整理解雇事件は難しいと言われていますが、長野地裁松本支部で、この三月六日、解雇無効とする仮処分決定をかちとることができました。
国際航空(本社調布)は、航空測量などを業務とする会社で、調布・仙台・松本の飛行場を利用しています。解雇された山口さんは、ベテランパイロットで松本訓練所の指導教官でした。
解雇の理由は、松本訓練所の閉鎖と会社全体の赤字転落にありました。
たしかに、訓練生がやめてしまい一人もいなくなっており、またパイロットという特殊の業種で従業員もそれほど多くない企業という点からして、楽観できず、このために仮処分申請までに五か月近くもかかってしまいました。
二、ところが、その間に、ベースアップ実施、訓練生の新入などの情報が入ったので、いずれにしても「拙速な解雇」であり、整理解雇四条件からすれば許されないとして、仮処分申請に踏み切りました。
審理においては、ベースアップ実施などを根拠に「赤字」について徹底的に釈明を求めたところ、その「赤字」が怪しいのではないかというところまで追いつめました。
そのうちに、会社の内部文書を入手することができ、それを分析すると、どうも解雇時点では黒字に転化しているようだということがわかって来ました。これをもとに求釈明すると、裁判所もはっきりさせるよう求めた結果、ついに会社も認めざるをえませんでした。
また、整理解雇四条件適用という点については、私たちが丸子警報器事件でかちとった東京高裁判決をふりかざしたものの、会社側が東京地裁の判例などで反論してくるために、苦労していたところ、裁判官から、就業規則に整理解雇の要件として「他の業務への配置が困難なとき」と規定されていることが指摘され、これをめぐって争いとなりました。
会社側は、訓練所に所属する山口さんでは、運航所の業務である航空測量・写真撮影等の資格がなく、運航所への異動は困難などと主張しましたが、山口さんは現に運航所の業務を手伝っていること、資格もたやすく取得できることを明らかにしました。
三、会社側は、不安に思ったのか、最終盤になって、山口さんの「業務怠慢」をあげてきました。
私たちは、このような主張は時機に遅れたものとして反撥する(裁判所は「事情」として扱うことになりました)とともに、「黒字隠し」も含めた不誠実な応訴態度も指摘しました。
最終に行われた会社社長に対する尋問では「異議」を連発したうえで、反対尋問を徹底的にやってしどろもどろにさせました(なお、この尋問については、裁判所からの録音テープを山口さんが四日間かかって反訳して書証として提出できたので、社長の見えすいた弁解が崩れる過程を尋問結果を引用しながら、最終準備書面で詳しく主張することができました)。
四、仮処分決定は、整理解雇四条件については触れませんでしたが、「他の業務への配置が困難なとき」について、あくまでも債務者会社に立証責任があることを前提に、それについての疎明がなされていないとして、申請を認容しました。
私たちは、調布や仙台の実情が必ずしもわかりませんし、松本においても受注が減っていることもあるので、どこのポストに余剰があって配転が可能であることを主張しませんでした。
人事配置などは会社側の主張を鵜呑みにしてしまう判決例が多いものですが、本件では、不誠実な応訴態度や解雇理由の問題点を徹底的についた審理経過からして、裁判所も債務者を支持することはできなくなったと考えられます。
やはり、展望が必ずしも開けてなくとも徹底的にやってみるものです。
五、山口さんは、この三月末で停年となります。私たちは、裁判所に「停年前に最後のフライトの機会を」と訴えましたところ、聞いてくれました。
最近団の集会などで東京などの「都会裁判所」では、整理解雇などについて厳しい状況にあることが報告されますが、長野などの「田舎」では、まだまだ勝利しています。
(弁護団 上條剛・中島嘉尚・相馬弘昭・松村)
東京支部 島 田 修 一
1 着々と進む改憲作業
衆議院の憲法調査会は昨年一二月までの二年間に二九回開かれた。憲法制定過程論が五回、日本のあるべき姿論が一五回である。参考人は三七人。特に一年半に及ぶ「あるべき姿」では、前半は新自由主義・軍事大国・権威回復という戦後の歴史観・価値観を全面否定する国家観が吹き荒れ、後半は科学技術、教育、グローバリゼイション、生命倫理、少子高齢化、IT革命、国連と安全保障、統治機構など、さまざまな角度から「二一世紀の日本の姿と憲法」の関係について参考人の意見陳述と質疑を行ってきた。並行して欧州を中心とする一一ケ国の憲法事情調査に入り、各国では頻繁に改正されているとか、憲法裁判所の提訴件数が非常に多いとか、王室制度を採る国においては国王の権限と国民の権利がうまく調整されているとか報告し、イスラエルを訪ねては首相公選制の導入を探る調査もした。
昨年一二月の自由討議では、中曽根元首相が「論憲は三年で終り。四年目は各党が要綱を出し、五年目から憲法改正への準備運動に入る」と改憲の手順を露にし、同じ一二月には民主党が「偏狭な一国平和主義」と「極端な個人主義」の両面から憲法見直しを求める中間報告を出した。そして調査会は本年二月一四日から四つの小委員会(@基本的人権の保障A政治の基本機構のあり方B国際社会における日本のあり方C地方自治)を設けて改憲論議にはずみをつける各論にいよいよ突入したうえ、この通常国会で中間報告を出し、国民投票法まで企てている。憲法調査会の議論は低調で学級崩壊だと揶揄する向きもあるが、明文改憲へ向けた作業と国会での雰囲気作りは予定どおり進められているのである。
2 地方公聴会
これに対抗していくには、「憲法政治を実行させる。それが二一世紀の展望」との運動を広げることではないか。事実、憲法政治を求める声は、昨年三回開催された憲法調査会の地方公聴会において、国民の強い要求として表明された。二六人の国民と自治体首長が公述人として憲法に対する意見を陳述したが、その特徴は、第一に男女平等・人権・生存権・地方自治などの分野において憲法が活かされていないとの批判や要求が相次いだこと、第二に世界平和実現のため平和憲法を活かした日本の主体的役割を求めて様々な具体策が提起されたことにある。その中身を概観すると、
@仙台ではテーマ『日本国憲法について』、会派推薦七名と一般公募三名が意見陳述。「九条は教師が夢とロマンを語って明日の日本を担う生徒に訴えていく大事な条文」(高校教師)。「九条はずたずたにされてきたが、それでも九条は九条」(パート女性)。将来を担う子どもたちのためにも国民の貴重な財産である平和憲法は守らなければならないとの訴えである。平和憲法に対する熱い思いが党派を超えた共通の願いであることは、公明党と民主党推薦の二人の公述人の意見陳述でも示された。「九条は今後ますます輝きを増してくる性質のものと考えております。覚悟を新たにして武力のない平和な社会の建設に今後も貢献していきたい」(大学教授)。昭和二五年に『新しい憲法のはなし』を読んだという町長は、「憲法との出会いは暗夜に光明を見出した思いであり、その放つさん然たる光は少年の心に希望と夢を育くんでくれた。戦争放棄、平和国家、文化国家の建設というまばゆいばかりの明日の日本の姿≠彷彿させるものだった」と振り返ったうえ、七期二七年、「憲法を町づくりにどう活かすか、を常に心がけてきた。これからも地方自治の実践を通じ、憲法をなお一層町づくりに活かす決意であります」と。
論憲そして軍事大国化後押しの中央とは異なり、憲法を活かしていくことこそ今後の社会発展の原動力だ、との意見が明快に表明されたのである(護憲論六名、改憲論四名)。
A神戸ではこの思いが具体的な要求や提言へと発展した。「災害時においては、市町村に充分な権限を与えるべきだ。憲法の生存権を踏まえた被災者支援をすべきだ」(神戸市長)。「住宅再建は個人の自律ではなく、公的支援制度を充実させて生存権保障を具体的に実践すべきだ」(川西市長)。復興救済の苦労と権限の限界からくる苛立ちがそこにあるが、二人の保守系市長は、人権の中でも最も基本である生存権保障の充実を切実な思いで訴えたのである。
世界平和実現のために日本は何をなすべきかについても、「武力に代わる平和の維持発展のため、日本は医療、福祉、防災などに関する平和の技術を提供して国際貢献を図るべきだ。それが平和を願う国際社会における名誉ある地位を日本が築く道だ」(兵庫県知事)を始め、「軍備に巨額を投じるのを止め、大規模災害、食料、エネルギー問題への取り組みで世界をリードすべきだ」、「アジアで人権保障の枠組みを作るべきだ」、「非核神戸方式を法制化し東アジア非核地帯を構築すべきだ」など、人間の安全保障の観点から、国際社会と連帯して平和と人権の制度的保障を確立していこうとの積極的な提言がなされた。神戸も会派推薦だったが、ここでも護憲論が六名で改憲論四名を上回った。
B名古屋公聴会は、九・一一事件後の一一月、『国際社会における日本の役割』をテーマに開催され、テロと報復戦争、日本政府の対応の是非について意見が出された。一人の主婦は「アメリカ国民がテロ恐怖を感じることなく生存する権利があるのと同じく、アフガンの人々も爆撃に脅かされずに生存する権利があるはずです」と、平和に生存する権利が国家間、文明間、民族間に差別があってはならないと訴えたうえ、「アフガンや中東諸国と友好関係にある日本は、彼らが戦争の恐怖と貧困から解放される平和な生活ができるよう、NGOなどと協力して被災者と難民救済のために人道支援を緊急に行うべきではないか」と迫り、傍聴席から拍手が沸き起こった。ペルーで九〇年代の四年間日本大使館に勤務しテロの恐怖を実際に体験した名大院生は、フジモリ政権によるテロ報復現場の悲惨な状況を伝えたうえ、「暴力が暴力を呼ぶ悪循環には常に罪のない人々を犠牲者として投げ出す構造がある。テロ特措法を制定して軍事報復に協力することを声高に主張する見解こそ、暴力がもたらす死という恐怖に余りにも鈍感な議論だ」と、軍事力行使しか考えなかった「日本政府は逆に平和ボケだ」と痛烈に批判した。再度傍聴席から大きな拍手が出て、中山会長があわてて制止する一幕となった。
公述人の意見は三対三に分かれたが、発言を許可された傍聴人五名の内四名が報復戦争に軍事協力した政府の対応を次々に批判し、小学校女性教師は「五月三日の憲法記念日には、小さい子には小さい子に解るようにと思って一生懸命、憲法の話を朝の会でしています。中学、高校でもっと大事に教えていくよう文部省に言っていただきたい」と、憲法教育を蔑ろにしている学校の現状をも厳しく批判したのである。
3 民主主義の力の結集
公聴会の雰囲気は調査会の雰囲気とは逆である。平和のうちに生存する権利の実現のための様々な具体策が提言されたことが意味するものは、平和的生存権の思想が豊かな内容に発展してきたからである。人権、男女平等、生存権、地方自治などの完全実施を求める声がぶつけられたことが意味するものは、「憲法政治の実行」こそ国民の切実な要求となっているからに他ならない。調査会において小林参考人(南山大学)が指摘された大事な視点、「生存権を軸にした社会権のより強い実現、さらには構造的暴力をなくすために汗を流して世界平和の建設に貢献する大きな課題が残されている」という視点が、国民の意識として広がり、要求として高まっていることはまちがいない。これに対する改憲論者の意見は調査会でのそれと同様に、「日本の伝統文化が入っていない」「押し付け憲法だ」の古い改憲論、あるいは「憲法は新しい時代にマッチしていない。五〇年、一〇〇年を考えた場合、今の憲法のままでいいのか」だけの説得力のない意見でしかなかった。地方公聴会をとおして国民の中に改憲の機運を持ち込もうとした憲法調査会の思惑は外れたと言えよう。
確かに今日、平和憲法と日本の進路は重大な岐路にあり、調査会は改憲作業を進めてはいるが、その逆流以上に平和憲法を国際社会共通の価値として広げ、憲法政治の実行を求める国民の欲求と基盤は広がりを示しているのである。この普遍と欲求さらに正義を民主主義の力として結集することが実現できれば情勢は激変する。憲法調査会に対抗して東京支部が二年間取り組んできた「Tokyo憲法school」(三月で一四回)においても、平和、労働、環境、社会保障の分野での憲法と現実の乖離を知れば知るほど、多くの受講者は憲法政治の実行を迫ることこそ自ら担うべき課題と捉え、たたかいの構えを強くしている。こうして地方公聴会、憲法スクールの二つだけを見ても、学び、語り合えば、改憲と有事法制反対の輪が広がる条件は確実にある。アメリカいいなりの軍事協力=@自衛隊が海外で戦争する=@自治体と国民が強制動員される=@アジアに対して再び加害者となる=B有事法制が持つこの確実な危険、しかし裏を返せば有事法制は国民と激突する致命的な欠陥を抱えているのだから、憲法と国際平和を破壊するその企みを明らかにすることは、民主主義の力を結集するためにも私たちの喫緊の課題である。「Tokyo憲法school」は三月二七日、有事法制国会提出という重大な情勢を迎える緊迫したもとで第二期最終講『日本国憲法を活かした二一世紀の日本』(上田耕一郎講師)を開くが、この集会を国民と共に決起する場とするべく準備を重ねている。
大阪支部 上 山 勤
1、平成一四年度の予算が衆議院を通過して、いよいよ有事法制と言う名前の『戦争法案』が登場する。アフガン難民の調査に赴いた団員はそれぞれの持ち場で見てきた事・聞いた事を訴えて戦争を告発している。私も今年はこの課題を活動の中心において・・・と考えているが同時に、アフガニスタンの実情については意識的に追跡をしてきた。
一月の調査では、パキスタンに逃れてきた難民の調査が主だった。家族揃って一四〇〇キロもの行程を逃れてチャマンに着いた人達や峻険な山越えをしてペシャワールへ逃れた人達だった。しかし、聞けばもっと弱い人達は国外に逃れられずに国内難民となっているという。それがずっと引っかかっていた。
2、最近、どうしてもほっておけない新聞記事に接した。皆さん赤旗が最近、『食料援助待つ三万人が住むテント』『草を食べて飢えしのぐ一家』と題して、アフガン北部のサリプルという所の国内難民キャンプのルポルタージュを載せたのを読まれたでしょうか。沢山の写真も添えられており、林立するテント・水汲みの少女などの写真と共に、『食用の草を集める女性』という写真があった。(余談かもしれないけれどアフガニスタンの民衆の生活実態を一番熱心に報道しているのは赤旗です。特派員をおいていない日経などは論外として、他紙もカブールの記事であったり配信をされた記事であって赤旗の記者は郊外=危険な地方に足を運んで取材をつづけており、僕は今回改めて報道姿勢をすごいと思いました。)
国内難民の実情を詳細にルポルタージュした記事でした。記事が告発している通り、国に残った人達も大変な状況で暮らしていました。
3、(1)米国では、ご承知のようにマスコミが先導して愛国心をあおり、戦争に反対する意見を圧殺する役割を果たしてきました。特に、九・一一以降、昨年いっぱいはそんな調子で、例えばテロがあった時にブッシュはネブラスカの山奥に逃げていた・・とコメントした記者が解雇され、(数百通の強迫e-mailが届いたそうです)系列の新聞社に対して空爆の被害者の実情を一面の記事にしてはならないという通達が流されたり、CNNでは空爆の被害者に触れる際には必ずニューヨークで六〇〇〇人が犠牲になった事にも触れる様にと指令が出されたりといった状況でした(雑誌世界二月号に詳しい報告が載っています)。
(2)今年に入ってやっと批判的な論調が登場する様になりました。空爆の被害についても報道される様になったし、国内の難民の窮状についても最近は様々な報道があります。私が見過ごせない記事と述べたのは三・一二付けでニューヨークタイムスに載った記事でした。それは、前記の赤旗報道と似たものでしたが国内難民の窮状を伝えています。前記の赤旗報道と同じ問題意識のルポでした。少し、紹介します。
(3)それはアフガニスタン北部のカンゴリという村に住むアクター・ムハメドという男性からの聞き取りルポです。記事の標題は『アフガン人は小麦を求めて息子を売っている』というものです。ムハメドは家族の食べ物がなくなり、どうする事もできなくなって一〇人の子どものうち一〇歳と五歳の息子を小麦をバック一杯もらうこと、二年間、毎月五$の支払いを受ける事と引き換えに売り渡したのでした。彼は、最初は家畜を手放し、家財道具や絨毯を小麦に変え、最後は家の柱を取り外して(暖を取るための薪として)売却して食料を得るのですがそれでも足りなくて、飢え死にかどっちかと迫られて息子を売る決断をしました。インタビュアーに対して、彼は弁解します。自分だってそうしたくなかったが仕方がなかったのだと。あれを見てくれ。あの婦人は何時も食べ物が無くて、草を食べている。野生のほうれん草があれば良いが無ければ雑草を集めて長時間塩ゆでにして食べている。今日も四人の子どもが草を集めに出ているといって説明をします。さらに、あちらの婦人を見てくれ、何時も草を食べていたが腹を下して下痢をして夫が死に、続いて息子も娘も衰弱して死んでしまった人だと紹介をします。彼の周りには、そのような人が沢山いて、だから彼の選択は仕方がなかったんだと言うのです。インタビュアーは事態を追跡し、子どもを買った人からも話を聞きます。『自分は彼らをすくってあげたのだ。 子どもたちはあと二年間支払いを続ければ自分の養子という事になる。子どもを雇うよりも買う方が安いんだ。』と、都市で食堂を経営する男性は答えていました。ルポルタージュは続きます。しばらくして、父親は子どもの様子を知りたくてバザールに出かけ偶然、長男と顔を合わせます。『屋根のある家での暮らしはどうだい?』と訪ねる父親に長男は『約束が違う』と泣きながら訴えます。彼は、夜になると羊と一緒に山にいかされ、羊と一緒に眠っているのでした。番犬がわりというところでしょうか。(しかし、少年はどうして自分が売られなければならなかったのか、の事情をよくわきまえていて帰りたいとは言いません。長男は、水汲みの途中だったのですが『遅くなるとぶたれるから』といって立ち去り、父親はただ見送るしかなかった。・・・)こんなルポルタージュでした。
(4)紹介が長くなりましたが、補足的なルポもあって、ようするに世界食料機構などの援助物資も空爆の影響で予定の速度で地方に届かないのだそうです。トラックで運んだ後はラクダやロバでなければ届かないそんな山奥です。空爆が直接人を傷つけ・殺している事は勿論ですが間接的にこのような苦しみをも引き起こしているのだと感じた次第です。
4、いま、現実に引き起こされているこの窮状を放置してはいけない。そう思います。マスコミは女性が解放されつつあるとかカブールで商店が再開されて賑わっているとか、英会話スクールが賑わっていると伝えます。しかし、ペシャワール会のホームページにアクセスすれば、実はカブールのような都市部では乞食をしている難民があふれていると訴えています。食料を確実に市民に手渡さなければ・・・と憂えているのです。圧倒的な多数が都市部でも山間部でも、過酷な窮状にあるアフガニスタンに対して、私たち日本人は軍隊を派遣する事ではなくて、食料をちゃんと民衆の手に届け、灌漑施設の再建に協力し、まずは生きていく事のできる社会的最低条件の整備に協力をする、そのことが強く求められていると感じます。
未だに自衛艦はインド洋で給油活動を続けています。目の前で、餓死していっているアフガニスタン人に一生懸命、食料や毛布を届けているのは自衛隊ではなくてNGOの人たちです。この国の信頼は、このNGOの人たちの手によってこそ勝ち取られているはずなのに。
有事法制の成立に血道をあげてる場合じゃないぞ!と叫びたい。
東京支部 後 藤 富 士 子
1 懲戒請求人からの異議申出の実情と「綱紀審査会」構想
二月二八日に開催された日弁連臨時総会議案書資料によれば、一九九九年では単位会綱紀委員会の議決総数五九四件のうち懲戒審査相当九一件、懲戒審査不相当五〇三件で、不相当に対する懲戒請求人から日弁連への異議申出は二〇三件である。この外に「手続を終えない」ことを理由とする懲戒請求人から日弁連への異議申出が二三件ある。なお、九八年の不相当議決四八〇件のうち異議申出一九〇件、二〇〇〇年は七五〇件と三八二件で後者の割合は約五一%にのぼる。そして、綱紀委員会の議決の八五%前後が「懲戒審査不相当」である。
現行制度では、単位会懲戒委員会議決に対する懲戒請求人からの異議と併せて、綱紀委員会議決等に対する異議も日弁連懲戒委員会が審査しているが、九九年の例では懲戒委員会の議決に対する異議申出が九件であるのに対し、綱紀委員会の議決に対する異議申出は二〇三件と、圧倒的に後者が多い。そして、二〇三件のうち取消し一件、却下一件、その余は棄却であるという。
そこで、議案は、単位会綱紀委員会の「懲戒審査不相当」議決および「手続を終えない」ことに対する異議申出を日弁連綱紀委員会が審査することとし、これに対する更なる不服申立制度として構成員に市民を加えた「綱紀審査会」を設置し、懲戒審査相当との決定があれば再度日弁連綱紀委員会で検討する、というのである。
2 「綱紀審査会」の欺瞞性
単位会綱紀委員会の「懲戒審査不相当」議決および「手続を終えない」ことに対する異議申出を日弁連綱紀委員会が審査することとする改革は合理的である。
しかし、実状に照らせば、日弁連綱紀委員会で異議が認容されることはごく例外である。それ故に、その処理が公正であることを制度的に担保するものとして「綱紀審査会」を設けるということである。すなわち、「綱紀審査会」が多数の事案をどのように審査するのかしらないが、「綱紀審査会」で日弁連綱紀委員会の結論が覆されることは予想できないのに、形だけ作って「公正らしさ」を誇示しようというのであろう。さらに、「綱紀審査会」の決定には拘束力がないというのだから、こんな馬鹿馬鹿しい仕事にやりがいを見出せる人がいるのか疑わしい。
ところで、このように弁護士会側の「公正」をいくらアピールしたところで、懲戒請求人の不満・不信が解消されるのだろうかと考えると、全く期待できないと思われる。懲戒請求人は、懲戒請求を申し立て、異議を申し出ることができるだけで、その申立がどのように審理されるのかも分からないし、結論を左右するような活動が自分にもできるかもしれないのに「蚊帳の外」に置かれるのだから、いくら弁護士会側が「公正にやりました。綱紀審査会でも確認されています」と言っても、納得できないであろう。これは、当事者に手続上の主体性を認めないでなされる結論は当事者の納得を得られない、という当然の理である。
かように、「綱紀審査会」構想は、その任務をさせられる人にとっても、懲戒請求人にとっても、欺瞞以外の何物でもない。
3 改革の原点−「市民の司法」
私たちが推進している今日の司法改革は、「市民の司法」を目指している。したがって、ロスコ・パウンドの「司法に対する民衆の不満と理解に改革の原動力を求めよ」という演説が改革の炎を燃やしたことを想起すべきである。
民事裁判・刑事裁判に対する民衆の不満を汲み上げて改革ビジョンを構想してきたはずの日弁連が、裁判所に対しては「迅速な救済」「手続の公正」「事実認定の正しさ」「納得のいく裁判」「当事者の権利保障」を求めながら、同じ要求が弁護士会に対して向けられたときに「弁護士自治」を楯にして、これらの正当な要求に背を向けるのでは、その偽善は鼻持ちならない。弁護士の司法改革に向けた意思が本当に試されるのは、まさに弁護士制度改革=自己改革においてである。
かつて司法試験改革問題の対応が迫られたとき、日弁連は「大幅増員」を回避するために「丙案やむなし」との選択をした。その後、検証の結果「丙案」が実施され、合格者一〇〇〇名になっても「丙案」は廃止されなかった。また、合格者増員と修習期間短縮が問題になったときにも、「現行統一修習堅持」の立場から、それを壊す一五〇〇名への増員をできるだけ先送りし、「修習期間一年半なら統一修習、一年なら分離修習」などと言って、「一〇〇〇名・一年半やむなし」との選択をした。しかるに、今や合格者三〇〇〇名・ロースクールの時代を迎えつつある。
こうして振り返ってみると、この一〇年余りに亘り、日弁連は一方で「司法改革」を掲げながら、自らの在り方に関する問題について、ついぞ主体的・自発的に改革を掲げたことはなく、外圧に圧されて「やむなく」目先の変化を受容したにすぎない。今回の臨時総会も、過去の総会と同じように、空疎な「弁護士自治」を共有しながらも、外圧に迎合するだけの執行部と原理主義者との不毛な対立であったと私は思う。このような不毛な対立がいつまで続くのだろうか。
執行部は、「綱紀審査会」の決定に拘束力がないこと、懲戒委員会の過半数を弁護士とすること等によって「弁護士自治」が守られるかのように言うが、市民の正当な批判・要求を敵視するような「弁護士自治」の正当性こそが問われていることを悟るべきである。懲戒請求人が懲戒委員会の審査手続において当事者として主体的に関与することを認め、被審査人弁護士にも当事者としての権利保障をして手続を当事者主義化することが、制度に公正・透明性をもたらす。そういう実質的改革をしようとしないで、懲戒委員会の構成や「綱紀審査会」の決定の拘束力を弁護士自治の指標とするような議論をしていたら、いずれこの指標も突破されるに違いない。その時になって後悔しても、後の祭りである。「綱紀審査会」を設置すれば、もはや後戻り(廃止)はできなくなるであろう。「丙案」のように。
臨時総会で承認された「基本方針」の決議は過半数の賛成で成立するものであるが、実際の制度設計に伴う会則の改正となると三分の二の賛成を要するから、現段階ではまだ考え直す余地が与えられている。したがって、「弁護士の在り方」など弁護士役割論まで掘り下げた綱紀保持・懲戒制度の改革について、遅ればせながら自主的・主体的議論をしようではありませんか。 (〇二年三月一日)
東京支部 山 口 真 美
1 はじめに
二〇〇一年二月九日(米時間)、ハワイオアフ島沖で宇和島水産高校の実習船「えひめ丸」が、米原子力潜水艦グリーンビルに衝突沈没させられてから丸一年が経ちました。当時船上にいた三五名の乗組員のうち、四名の高校生、二名の教員、三名の船員の尊い命が奪われました。そして、かろうじて助かった乗組員は現在も深刻なPTSD(心的外傷後ストレス症候群)に苦しみ続けています。
その一方で、米海軍は、民間人を乗せた原潜の体験航海をいまだに実施しており、緊急浮上訓練も続けています。このような米海軍の態度には、えひめ丸事件に対する反省やこのような悲劇を再び繰り返さないという思いは微塵も認められません。
私たち「えひめ丸被害者弁護団」は、@事件の真相究明、A事故の再発防止策の確立、B被害者への正当な賠償を三つの柱として、米海軍との交渉を半年にわたって続けてきました。えひめ丸被害者弁護団では、この米海軍との交渉過程や弁護団での独自の調査で明らかとなった「えひめ丸事件」の真相と疑問点を、たくさんの人々にお知らせしたいと思い、パンフレットを作成しました。この場を借りて、パンフレットの中味を紹介させていただきます。
2 パンフレットのご紹介
パンフレットを通じて第一に伝えたいことは、遺族の思いです。
「こんな広いハワイの海でなぜ最新鋭の原子力潜水艦が衝突したの?」「どうして実習船の航海する海で体験航海や緊急浮上訓練を続けるの?」「時間が経てば経つほど許せない」パンフレットには、そのような被害者遺族の思い、訴えを掲載しています。
第二に、このパンフレットでは、ワドル元艦長は、えひめ丸の存在に気づいていたのではないか?重要な証拠が隠蔽あるいは改ざんされているのではないか?えひめ丸の船体構造に問題があったのではないか?等々の疑問点を数々の資料を引用しながら明らかにしています。
例えば、米海軍が作成した原潜の潜望鏡のCG(コンピューターグラフィックス)の映像からは容易にえひめ丸の存在が視認できることが映像を通じてはっきりと示されています。また、えひめ丸被害者弁護団が独自に作成したCG(コンピューターグラフィックス)の映像からは、ソナー記録が示すえひめ丸の位置が実際のえひめ丸の航跡と大きく食い違い、えひめ丸がどんどんグリーンビルから遠ざかっていることになっています。査問委員会に出された記録は、このようにでたらめなものであり、真相を隠蔽し、ワドル元艦長の責任を軽減するために重要な証拠が改ざんされていることを浮き彫りにしています。
3 最後に 〜パンフレット購読のお願い
米海軍側は、査問委員会において真相の究明もワドル元艦長の処分も済んだとする態度に終始しており、米海軍代理人は補償交渉の権限しか与えられていないとして、真相究明、再発防止については極めて消極的な姿勢しか示していません。
また、昨年一〇月の船体の引き上げ、遺体の収容が行なわれたこと、そして一年が経過し、二〇〇二年二月九日(米時間)のホノルル市での慰霊碑の除幕式が行なわれたことを契機に、米海軍側は、えひめ丸事件は賠償交渉を残してすべて解決したとして早期の幕引きを図ろうとしています。
しかし、遺族の思いを置き去りにしたまま、真相究明に蓋をし、具体的な再発防止策も示さないままでの幕引きを許すことはできません。
私たちは、できる限りたくさんの方々にこのパンフレットをお読みいただいて、この事件を風化させず、平和で安全な海を守っていくために何が必要かを一緒に考えていただきたいと思っています。また、このパンフレットがより多くの方々の手に渡るようご協力いただきたいと思っています。
ぜひとも、団員の皆様には、このパンフレット(三〇〇円)を手にとってお読みいただきますよう、また、事務所、地域、各団体などで活用し、広く普及させていただきますようお願い申し上げます。
(連絡先)
〒190-0022 東京都立川市錦町一・一七・五 三多摩法律事務所
TEL042(524)4321 FAX042(524)4093
自 由 法 曹 団 事 務 局
自由法曹団有事法制阻止闘争本部のメンバーが書き下ろしました。有事法制の学習会に活用してください。広く普及してください。定価七〇〇円です。
※ご注文は団本部宛にFAXでお願いします。