<<目次へ 団通信1260号(1月11日)
佐藤 誠一 | |
加藤 幸 | 「9条頑張れ!弁護士と市民がつどう『第9』コンサートin幕張メッセ」合唱団へのお誘い |
角銅 立身 | 一二五六号(一二/一)安部千春さんのいうところの「弱少辺境事務所」発起人である「私」からの報告 |
東京支部 佐 藤 誠 一
一三年前に日本従業員を全員解雇する暴挙に出ながら、争議団全員職場復帰で争議を解決した後、順調な労使関係にあったスカンジナビア航空で、二度目のリストラ解雇事件が発生しました。
〇七年三月にリストラ計画が発表され、以来労組から相談を受けていた私は、その後の経過を見つつ、「解雇はないだろう」、六月二五日に七月末日付けでの解雇予告が出されても、「どこかで解雇は撤回するだろう」、とたかをくくっていました。七月末日を前に、どうやら法廷闘争に突入は必至、との情勢に、さて手続はどうしようか…と悩みました。結果、仮処分はなし、労働審判をやってみよう、と決断しました。
一三年前のリストラ時、あの、変更解約告知ー解雇有効ー決定をくらいながら、争議団全員が職場に戻ったスカンジナビア労組に、「解雇の金銭解決」の選択肢はありません。争議を構える限り、何が何でも職場復帰、これしかありません。事件を担当する弁護士にとって、なんと重たい荷物でしょう!
これで労働審判を選択することには、当然ながら不安がありました。しかし決断した理由は、本件が「何でこれが整理解雇か」、と理解不能な事案であって、かつそれが素人目にも分かりやすい事案と判断したからです。
会社のリストラ計画は、貨物部門と成田空港部門から総員六名(当初八名、団交の経緯を踏まえ後に会社が計画を変更)を整理する内容でした。配転で海外支社に一名転出し、さらに任意早期退職者を募集したところ、会社の計画外の旅客営業部門からの一名を含め、整理人員数に見合った五名が早期退職に応募しました。即ち六名が減員となりました。貨物部門にいた被解雇者は、それにもかかわらず解雇されたのです。こんなのあり?
その他おまけもたくさん。(1)会社は、リストラ計画について労組と団交を重ねながら、併行した春闘で賃上げに応じています(あとでわかったことですが、経営者の報酬も賃上げされていました)。(2)ここ数年また〇七年も、労使合意した年俸以外に、「ボーナス」も支払ってきました。被解雇者にも今年前期分のボーナスが支払われています。(3)会社は〇六年〇七年と経費削減二カ年計画をかかげ、全社を挙げてそれに取り組み、〇六年のうちに〇七年分も含めた二カ年分の経費削減目標を達成してしまいました。〇六年末、経営者は全労働者に「君たちはよくやった、来年もよろしく」とクリスマスメッセージを発したのでした。
これらの事実を否定できない会社は、「…だからといって経営が順調だったとは言えない…」としか言えませんでした。会社が主張した経営不振のデータも、〇七年の一月〜八月のものだけ。〇六年分は?出せないんですよ。だって経営者が「君たちはよくやった」と従業員を賞賛するくらいの経費削減を果たしていたわけですから。
「何でこれが整理解雇か」、と理解不能でしょう?やってみる価値はありそうでしょう?で、やったわけです。
判断は当たりました。第一回審判。労使双方の審判員から、会社に、なんでこれで解雇なのか、と当方が挙げた事実を踏まえ、質問の連発でした。会心の気分でした。しかし会社は徹底抗戦の姿勢を崩さず、これは訴訟に移行するだろう、と腹をくくりました。
ところが第二回審判に、会社は解雇撤回、職場復帰の調停案を用意してきました。拍子抜けしました。第三回目は調停条項のつめ。会社はここであれこれ粘り、決着まで三時間かかりました。
労働審判で、何ができるか、どこまでできるか、全国で試行錯誤が続いているかと思います。こんな「思いつき、無計画、リストラ」って、そうはないでしょうけれども、私自身労働審判初体験で、解雇事案の職場復帰という成果を挙げられたことに満足しています。しかも解雇から四ヶ月たたずに職場復帰ですからね。みなさん、どんどん、あれこれ、試してみましょう!
東京支部 加 藤 幸
9条世界会議のオープニングで、ベートーヴェン交響曲第9番第4楽章を演奏しようという企画が動き始めました。
自由法曹団通信一二五九号(一月一日)で、根本孔衛団員が9条世界会議の意義を歴史的・国際的な視点から分析され、9条世界会議が憲法改悪阻止運動の推進力となることへの期待を述べられていますが、今回は、その9条世界会議での『第9コンサート』のご紹介とともに合唱団へのお誘いをさせていただきたいと思います。
皆様ご存じのように、『第9』はベートーヴェン第9番目の交響曲であり、その第4楽章はシラーの詩『歓喜に寄す』に音楽を付けたもので、フルオーケストラ・独唱および合唱によって演奏され『歓喜の歌』としても親しまれています。
弁護士が中心となっての『第9』の演奏は、昨年九月二六日に行なわれた「9条頑張れ!弁護士と市民がつどう『第9』コンサート」に続き二回目となります。
第一回目の「9条頑張れ!弁護士と市民がつどう『第9』コンサート」では、文京シビックホール一八〇〇席のチケットが八月初めに完売となり、弁護士四〇名を含む二〇〇人の合唱団が、外山雄三さん指揮する日本フィルハーモニーの演奏で高らかに歓喜の歌を合唱しました。
平山正剛日弁連会長にも登壇してのご発言をいただき、弁護士と市民との「9条がんばれ」という熱い交歓が実現しました。以来、「ベートーヴェンの第9」と「日本国憲法の9条」とは、切っても切れない縁で結ばれたように思われます。
今回は、その感動を再現したく、「9条頑張れ!弁護士と市民がつどう『第9』コンサートin幕張メッセ」と題して、9条世界会議という大舞台で七〇〇〇名の聴衆を前にしての再演となりました。
今回の演奏は、東京ニューシティー管弦楽団、指揮は同楽団常任指揮者の内藤彰さんです。合唱団は、弁護士・市民を中心に二〇〇人規模のものを予定しており、現在合唱団員を大募集しております。
合唱団員には五月四日の本番に向け、毎週木曜日ないし金曜日の一八時四五分〜二一時の練習に、可能な範囲で参加していただきます(一月末から四月末までの全一三回)。
練習では、毎回プロの指導者・ピアニストを招いての本格的な指導を行ないますので、経験者だけでなく、合唱が初めてという方も大歓迎です。第一回目の「9条頑張れ!弁護士と市民がつどう『第9』コンサート」の合唱に参加され方からは、本番はもちろん、練習が非常に楽しかったという声を多数いただいていますので、ふるってご参加下さい。
また、「『第9』を歌うのはちょっと」という方も、コンサートの成功ひいては9条世界会議の成功に向け、ご協力いただければ幸いです。ぜひ「9条頑張れ!弁護士と市民がつどう『第9』コンサートin幕張メッセ」の実行委員会にご参加下さい。
二〇〇八年五月四日、9条がんばれ!の気持ちを込め、『歓喜の歌』を幕張メッセに響き渡らせましょう、そして、平和を愛する人々の歌声で9条の素晴らしさを世界に広めましょう。
多くの方のご参加をお待ちいたしております。
【合唱指導】
鈴木与志一 先生(予定)
ピアノ 西川葉子 先生
【練習日】
1月 24日(木) 31日(木)
2月 8日(金) 14日(木) 21日(木) 28日(木)
3月 7日(金) 13日(木) 28日(金)
4月 3日(木) 10日(木) 17日(木) 24日(木)
この他に、本番直前に、指揮者あわせを予定しています。
【練習場所】
R’sアートコート(労音大久保会館)
JR新大久保駅から徒歩8分
【参加費】
49期以前の方 3万円 50期以降の方 2万円
(参加費は練習会場費・指導費等に当てさせていただきます。別途9条世界会議への参加費が必要です。また、楽譜、練習用CD、本番衣裳などは、各自ご負担いただきます)
【お問い合わせ先】
弁護士 秋野達彦
(三多摩法律事務所 電話:042-524-4321 FAX:042-524-4093)
福岡支部 角 銅 立 身
三〇数年前から弱少辺境事務所を立ち上げ、自由法曹団員の弁護士会活動から地域に根を張った活動をしたなかで、身体障害者・知的障害者施設経営のボランテイア活動がある。
1 一四年前からボランテイアで社会福祉法人つくしの里の理事を勤め、現在は理事長である。
つくしの里(身体障害者通所授産施設三〇名)、第二つくしの里(知的障害者通所授産施設三〇名)の二棟の建物の西側に、社会福祉法人向上社がある(共に田川市の土地である)。
ア 同社は精神障害者通所授産施設アドバンスセンター及び精神障害者地域生活支援センター「ゆう」を設置経営している。
T原告は、平成七年作業指導員として雇用され、平成一三年ソーシャルワーカーに昇格し、翌年五月には施設長に昇格し、二年就労したが
(1)残ったカレーの処理で始末書を二人に書かせ、Aさんは重大な人身事故を起こしながら口頭報告のみ。
(2)Bさんは菓子製造販売で成績が上がらないので指摘され腹痛、下痢、頭痛など。
(3)Cさんは「学歴も、資格もないのにこんな給与を受け取って・・」と嫌みをいわれ続け、
(4)Dさんは国家試験の受験を前にして、威圧感を感じて、
(5)G、Eさんは直属の部下ではないのに、暑い時期に一週間以内に外塀フエンスの下のセメント塗装するように命じたなど。
(6)Eさんに対し、アドバンスセンターのコーヒー販売に協力するよう強要し、その後の会議においてEさんを名指しして、売上げが伸びていないと指摘したなどで。
イ T原告は平成一六年三月末で施設長から指導員に降格され、賃金も下がった。降格処分の無効、賃金減額無効などによる差額支払を請求した事件。
ウ 先ず、T原告は、被告を相手として労働審判を申立て、第二回審問期日が平成一八年二月一八日に予定、斡旋委員に松坂弁護士、新日鉄出身の経営側赤木氏、同経営出身の労働側宮崎氏が指名され、そのための調査が同年一月二五日現地田川市の向上社で開かれ、被告の代表者山野ヒデ子、理事・金高兆次元理事(元会員)山下弘、理事・大塚慎吾、新開清英、福地秀幸、寺本紀子の七名から事情聴取が行われ、その中でT原告は、向上社とおなじ目的を持つNPO法人を平成一七年七月一一日付で設立登記していた事実が判明していることが確認された。
エ そのためか(?)、T原告から、平成一八年一月二四日付で、同年二月二八日付の退職願が提出された。そこで福岡地方裁判所小倉支部平成一八年(ワ)第五〇一号賃金請求事件となったもの。
オ 判決は、原告の職員らに対する対応によって、職員らとの関係が悪化し、同職員らの退職につながったこと、こうした経緯が家族会の知るところとなり会員(通所者)への混乱を引き起こし、家族会が原告に対する不信を抱くようになったこと、そのような事情を考慮しても、精神障害者の通所授産施設としての性格上、様々な悩みを抱えた通所者の家族らが安心して通所者を委ね、相談にのってもらうことのできる施設であることが求められ、この点に問題のあった原告を降格させることもやむを得なかったものといわざるを得ないとして、請求を棄却した。
2 私は、一九七八年ニューヨークでの第一回国連軍縮特別総会に自由法曹団からNGOの一員として出席し、ニューヨークのヤンキースタジアムでのナイターを観た。安部千春さんのソフトバンク観戦について宴会の乾杯の席で、「球場では鳴物も人声もなく、ピッチャーの投手音、打者のバット音、キャッチャーのミット音の後、大歓声と拍手があった」、日本ではショーではないか」と感想を言ったところ後で、「それは言い過ぎ、主催者に酷だ」との批評があり、反省すべきかを考えている。
3 つくしの里の憲法
・私たちは、一人ひとりがライフステージに合わせた要求に基づき安心で豊かな生活をおくる権利を保障します。
・私たちは、障害のある人たち、家族、関係者一人ひとりのニーズを大事にできる民主的な運営・経営をめざします。
・私たちは、日常活動の充実・向上に取り組むとともに地域生活
余暇活動等の充実を図ることで障害のある人たちの生活をより豊かなものとし、その発達を保障します。
・私たちは、誰もが一人ひとりの想いに基づいた支援を、公的責任のもとに受けられる社会を地域と共にめざします。